登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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日本におけるAO入試の歴史は浅く、平成2(1990)年度入試において慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で最初に導入されている。AO入試を導入する大学が増加したのは、平成8(1996)年7月に答申された第16期中央教育審議会の第1次答申で提唱された[生きる力]の育成を基本的な観点として平成9(1997)年6月に答申された第2次答申で「日本型AO」の整備が提言されて以降である。 もう少し詳しくAO入試導入の経緯についてみておこう。 第1次答申において、これからの社会は、国際化、情報化、科学技術の発展が一層進展し、変化の激しく、先行き不透明となることが展望された。このような社会状況にあっては、知識の陳腐化が早まり、学校時代に獲得した知識を大事に保持していれば済むということはもはや許されず、不断にリフレッシュすることが求められるようになっている。加えて、将来予測がなかなか明確につかない、先行き不透明な社会にあって、その時々の状況を踏まえつつ、考えたり、判断する力が一層重要となってくる。 このように考えるとき、これからの子供たちに求められる資質や能力は、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力であり、自らを律しつつ、他人と協調し、他人を思いやる心や感動する心など豊かな人間性とたくましく生きるための健康や体力である。これらの資質や能力は総称して[生きる力]と呼ばれた。 続いて、第2次答申において、子どもたちの[生きる力]をはぐくむという観点に立って、大学入学者選抜改善の基本方向が提示された。 すなわち、(a)学力試験を偏重する入学者選抜を改め、能力・適性や意欲・関心などを多角的に評価するため、選抜方法の多様化、評価尺度の多元化に一層努める、(b)[ゆとり]の中で[生きる力]を育成するという初等中等教育の改善の方向を尊重した入学者選抜の改善に努める、(c)選抜方法の多様化、評価尺度の多元化などの入学者選抜の改善については、全体としてかなり進んでいるものの、影響力のある特定の大学を中心として、なお十分とは言えず、以上の改善に当たっては、そうした大学が受験競争や大学入学者選抜全体に大きな影響を与えていることにかんがみ、率先して改善に努める、(d)学力試験を偏重せず、多様な選抜方法を取り入れていくなどの改善を進めるためには、様々な条件整備や進路指導の改善など関連する施策を進める、(e)入学者選抜の改善とともに、特定大学への受験競争の緩和を目指し、大学相互の垣根を低くしていくため、高等教育全体を柔らかなシステムとしていくことや、大学教育の充実と学業成績の評価の厳格化を進めていく、の5点である。 これらの基本方向に沿って、総合的かつ多面的な評価を重視するなどの丁寧な入学者選抜を行ったり、調査書の重視など初等中等教育の改善の方向を尊重した入学者選抜の改善を進めるためには、実施体制の整備が必要である。そのような理由から、「アドミッションズ・オフィス」の整備が指摘された。 この答申に沿って、平成12年度入試において国立大学(3校)で初めてAO入試が実施され、平成17(2005)年度入学者選抜においては,国公私立大学あわせて401大学(全大学の57.4%)でAO入試が実施されている。 br> |
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参考文献 ・中央教育審議会『21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)』1996年7月、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/chuuou/toushin/960701.htm、2005年10月31日参照。 ・中央教育審議会『21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第二次答申)』1997年6月、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/chuuou/toushin/970606.htm、2005年10月31日参照。 |
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