生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

地域福祉と生涯学習 (ちいきふくしとしょうがいがくしゅう)

キーワード : 福祉のまちづくり、コミュニティ、住民参加・参画、福祉教育、福祉学習
河内昌彦(こうちまさひこ)
2.地域福祉の内容
 
 
 
 
   近年、わが国の社会は、少子高齢、高度情報化、国際化等の動向とともに経済情勢の変容を背景として、社会福祉の制度改革が進められている。地域での生活問題には、1人暮らしの高齢者を取り巻く生活や介護の問題など、少子高齢社会を背景にして解決が求められる高齢者に関する問題は多い。また、児童虐待や青少年の健全育成など児童福祉の問題も存在し、障害のある人のための福祉では、社会参加や就労、偏見や差別の問題もある。さらに、引きこもり、ホームレス、フリーター、ニート等に関する問題もある。こうした地域に存在する問題に対して、いかにして、それらの問題に対して解決能力を住民の協働のもと地域で涵養していくかが、問われるところである。地域福祉の構成要件はそうした点に意義がある。
 わが国の地域福祉の内容は、
1.在宅福祉サービス(ア.予防的・福祉増進サービス、イ.在宅ケア・サービス、ウ.施設利用サービス)
2.福祉教育・生涯学習・ボランティア活動
3.調査・計画・運営
4.広報・啓発
5.共同募金・福祉基金、財源
6.環境改善サービス(ア.物的環境改善、イ.制度的環境改善、ウ.意識的環境改善)、7.組織活動(ア.福祉組織化、イ.地域組織化)
で構成される。
 在宅福祉サービスでは、要援護者やその家族の在宅福祉ニーズの充足、住民を対象にした健康増進、相談援助、情報提供、在宅と施設の福祉ネットワーク、施設でのリハビリテーションや通所サービスの利用などである。
 福祉教育・福祉学習・ボランティア活動では、人間理解や人への関わり、人間関係、住民の社会福祉意識、社会福祉に関する学習、福祉学習者への支援、学校教育における福祉教育、ボランティア育成・支援、ボンンティアセンター等である。
 調査・計画・運営は、地域福祉を住民参画による公私協働体制のもと、福祉問題を把握するための調査に関すること。また、地域福祉推進のための計画やその運営など有機的に取組むものである。
 広報・啓発は、住民に適正な情報を伝え、広く知らせるとともに、社会福祉への理解や認識を深める。共同募金・福祉基金、財源では、地域福祉推進のための財源確保、募金活動とその有効活用などである。
 環境改善サービスでは、要援護者の生活を阻害している物的環境の改善、社会参加や生きがいづくりなどの制度的促進、住民意識や態度の変容を図るなどである。組織活動では、福祉サービス利用者への調整を図り、福祉サービスの供給体制の組織化や効果的運営の面での福祉組織化と、地域福祉推進のための住民の参加・参画、協働を促進し、福祉コミュニティづくりを進める地域組織化がある。こうした地域福祉の内容には、たとえば、介護ニーズを抱える個人やその家族への援助、また、地域全体を包括して暮らしよい福祉環境づくりなど幅広い活動がみられる。
 私たちは、地域の生活者として、人間としてよりよき人生の営みや心潤う生活について、日ごろの生活環境や住民相互の結びつきを考え、さまざまなことを学び、知識を深め、新たなことを発見し、その地域の実態にあった福祉環境づくりを推進し、福祉コミュニティの創造に向けての取り組みが求められる。そうした創造に向けて、地域福祉の内容が住民に理解され、地域での住民福祉活動の取り組みとともに、それが享受でき得る状況を地域の中でいかに構築し、確立していくか、ということも重要で問われるべきことである。
 
 
 
  参考文献
・岡村重夫『地域福祉論』光生館、1974年
・全国社会福祉協議会『在宅福祉サービス組織化の手引き』全国社会福祉協議会、1980年
・永田幹夫『地域福祉論』全国社会福祉協議会、1988年
 
 
 
 
 



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