生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

地域福祉と生涯学習 (ちいきふくしとしょうがいがくしゅう)

キーワード : 福祉のまちづくり、コミュニティ、住民参加・参画、福祉教育、福祉学習
河内昌彦(こうちまさひこ)
1.地域福祉とコミュニティ
  
 
 
 
   わが国の地域福祉は、1970年代に社会福祉の実践体系の中で生まれた社会福祉の一つの領域であり、今日、地域福祉は社会福祉の中心的な位置付けとなっている。福祉(welfare)は、個人として、地域の生活者として「幸せ」「幸福」であり「よりよき人生の営みや暮らし」(well−being)を意味するものである。また、地域は、住民が人間として日常生活を営む基本となる場であり、健康で文化的かつ人生や生活や生命の質(QOL)を高め、自己実現を可能ならしめる拠点である。そうした生活権の視点から、地域福祉を捉えることが大切である。
 社会福祉法では「地域福祉の推進」が規定され、地域住民など社会福祉の活動者相互の協力と社会、経済、文化などへの活動参加への機会の確保などに努めなければならないとしている。また、市町村など行政による「地域福祉計画」策定や、地域福祉推進を担う中核的な団体として全国、都道府県・市区町村に設置されている社会福祉協議会の規定もあり、公私協働による福祉のまちづくりの活動に取り組まれている。
 社会福祉基礎構造改革の流れの中で、2004(平成16)年以降、地域福祉は新たな展開を迎えている。地域福祉とは、地域に暮らすすべての住民が全生涯にわたり、人間として、真に生きるに値する幸せな人生や生活を、生活の拠点である家庭や地域で楽しく健やかに実現できることを目指し、そのための政策、法・制度、組織、機能・役割、運動、方法・技術、財源、情報・計画、マンパワー、事業・活動など、それを社会的、専門的に推進するための諸側面とともに、一方では、住民の地域生活者としての意識構造や住民の地域活動への主体的、自主的な参加・参画という実践かつ具現化の要素とその環境形成を包含している。
 地域福祉では、コミュニティ(community)という語が使用され、その語の特徴は「共同」(com)という関わりや関係存在の概念を含んでいる。それは、地域における共同(体)として、地域住民や地域社会やさまざまな団体などへのよい関係構築が求められるという意義がある。
 地域福祉推進には、日常生活の営みの中で地域住民の主体的自主的な参加・参画をもって、相互の人的、活動的な関係性を築き、その連携や連絡・調整をとり、協働態勢による福祉ネットワークを密にし、有効な地域福祉実践を図り、それら一連を評価することが必要である。そうしたプロセスの諸側面への働きかけや作用をおよぼす仕事や事業がコミュニティワーク(community work)であり、その専門職がコミュニティワーカー(community worker)と言われる。また、地域福祉推進のためには、地域の中で組織化が必要であり、この組織化がコミュニティ・オーガニゼイション(community organization)であり、地域組織化と福祉組織化がある。また、コミュニティ・ケア(community care)は、地域の中で、地域がもつフォーマルやインフォーマルの福祉機能や、その地域の福祉資源を活用して展開される地域福祉を意味している。
 地域福祉では多様化し複雑化する住民ニーズや課題に対して、その解決のために住民の行動意識を高め、いかにして住民の主体的活動展開や福祉資源活用を図るか、福祉コミュニティづくりにおいて、地域力、福祉力、教育力を涵養し、その発揮が期待される。
 
 
 
  参考文献
・全国社会福祉協議会『在宅福祉サービス組織化の手引き』全国社会福祉協議会、1980年
・東広島市社会福祉協議会『明日へ未来へー21世紀に向けての東広島市地域福祉計画のあり方についてー』東広島市社会福祉協議会、1989年
・岡村重夫『地域福祉論』光生館、1974年
・河内昌彦、船津守久、石田一紀『介護における人間理解ー心安らぐかかわりを求めてー』中央法規、1999年
  
 
 
 
 
  



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