生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年3月15日
 
 

公民館主事 (こうみんかんしゅじ)

citizens’ public hall officers (Kominkan officers)
キーワード : 公民館、公民館職員、公民館主事、主事、吏員
坂本登(さかもとのぼる)
2.動向
 
 
 
 
   公民館の「主事」は,昭和34(1959)年の社会教育法の改正時において,新たに挿入されて法的根拠を得た。しかし,館長が必置であるのに対し,主事は「置くことができる」と任意設置とされ,その設置は市町村の判断に委ねられることとなった。
 一方,国は,「公民館の設置及び運営に関る基準」を二度告示している。最初は昭和34(1959)年の社会教育法の改正に伴うものであり,次は平成15(2003)年の同基準の改定時である。前者を旧基準,後者を新基準として二つの告示を対比して見ると,主事に関する表記からは,微妙な相違を読み取ることができる。すなわち,旧基準では館長と並び専任の主事も必置とし,その設置数を増やすことを市町村に期待しているのに対し,新基準では主事の設置もその設置数も公民館を設置する市町村の判断に委ねられている。
【旧基準】
公民館には,専任の館長及び主事を置き、規模及び活動状況に応じて主事の数を増加するように努める
【新基準】
公民館に館長を置き、規模及び活動状況に応じて主事その他必要な職員を置くよう努める
 こうした考え方の違いは,時代的な背景が反映されて生じていると考えられる。
 職員総数(下記のデータ参照)は,この50年間で,総数は倍増し,専任数は約3倍増となっている。主事の人数もまた,平成17(2005)年には,昭和30年に比べ,総数が2倍強,専任主事数が約3倍増となっている。しかし,専任職員の比率を算出してみると,職員総数比では,昭和30年の17.4%から,昭和50年に44.1%へと上昇するものの,平成17年に22.9%へと半減している。同じように,主事総数(専任,兼任,非常勤の主事の総数)比についてみると,専任の比率は,昭和30年の7.6%から,昭和50年に13.4%へ上昇した後,平成17(2005)年には11.0%に低下している。
 このように,データは,公民館が非常勤及び兼任の職員に依存していることを示している。さらに主事数は,いずれの年度とも,職員総数のほぼ三分の一程度であり,平成17(2005)年度の場合,1施設当りほぼ1人しか配置されておらず,専任に限っていえばわずか0.3人に過ぎない。
 旧基準が制定された時期は,社会教育法の施行後10年が経過して社会教育が普及され活発化しつつある時期にあったことに加え,わが国が高度経済成長期へと移行していった初期の時期に相当する。これに対して,新基準が公布された時期は,バブル崩壊後の経済の低成長期と地方分権時代への移行期に当たる。
 このように,社会教育の中核としての公民館への期待,公民館職員をはじめ,公民館の主事の設置とその専任化への気運は,社会経済や行財政施策の変化・動向が色濃く反映される,ということができる。
[年度]・・・・・[館数][職員総数(内.専任)][主事総数(内.専任)]
 昭30(1955)年:35,352館、24,995( 4,354)人、7,040(1,910)人
 昭50(1975)年:15,752館、36,899(16,273)人、12,246(4,933)人
 平8(1996)年:17,819館、52,324(13,751)人、19,030(7,489)人
 平17(2005)年:17,143館、52,230(11,982)人、17,127(5,760)人
 
 
 
  参考文献
・文部省『わが国の社会教育』(昭和40年)
・文部科学省『社会教育調査報告書』)
 
 
 
 
 



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