生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年3月15日
 
 

公民館主事 (こうみんかんしゅじ)

citizens’ public hall officers (Kominkan officers)
キーワード : 公民館、公民館職員、公民館主事、主事、吏員
坂本登(さかもとのぼる)
3.課題
  
 
 
 
   社会教育調査報告書によれば,平成17(2005)年現在,公民館は,設置数17,134館,職員総数52,230人,主事総数17,127人を数える。このうち,専任の主事は5,760人で,公民館職員総数の約1割(11.0% ),専任率(兼任及び非常勤を含めた主事総数に占める専任主事の比率)がほぼ三分の一(33.6%),1施設平均0.3人である。ちなみに,図書館の専任の司書(補)は図書館職員総数の86.5%,専任率が54.3%,1施設平均3.6人であり,博物館(登録博物館と相当施設を含む)の学芸員(補)は,全博物館職員の31.2%,専任率が83.7%,1施設平均3.0人である。
 教育機関には,専有ないし専属の「施設」,「専門的職員」,「プログラム」を有していることが求められる。前掲のデータは,同じ教育機関である図書館や博物館の司書,学芸員に比べ,公民館の主事の設置がいかに低調であるかを示している。このことは,公民館に,専門的職員としての専任主事の充実を図ることが喫緊の課題であることを意味する。
 ところが,公民館の主事の身分,職務等に関しては,法的根拠が脆弱である。市町村が設置する公民館の主事は,「教育長の推薦により,当該市町村の教育委員会が任命する。」(社会教育法第28条)こととなっている。しかし,市町村の教育委員会には,実質的な職員の採用権・人事権がない。このため,公民館の主事の多くは,まず行政職員として採用され,その後に,人事異動よって教育委員会に出向して公民館の主事となり,数年後に再び行政部局へと異動していく。職務については,「主事は,館長の命を受け,公民館の事業の実施」に当たる(社会教育法第27条)という規定があるのみである。さらに,近年,地方分権化にともない主事の嘱託化が広がりつつあることもあって,公民館の主事の身分や職務の明確化,専任化は抑止される傾向にある。
 また,「公民館の設置及び運営に関する基準」(平成15(2003)年6月告示)の第8条は,「主事には,社会教育に関する識見と経験を有し,かつ公民館の事業に関する専門的な知識及び技術を有する者をもって充てるよう努める」と規定している。また,文部科学省の「社会教育調査報告書」は,公民館の主事を,司書,学芸員と並び指導系職員に位置づけている。しかし,主事に関しては,指導系職員としての専門性を根拠づける法がなく,長い間あいまいな状態に置かれている。
 このことに関し,福原匡彦は「職務内容からいえば,社会教育主事と同様の専門性を有している必要がある」(『社会教育法解説』全日本社会教育連合会)との見解を示し,『公民館のあるべき姿と今日的指標』(全国公民館連合会,昭和43年)では「プログラマー(内容編成者)」,「カウンセラー(相談専門員)」,「コミュニティ・オーガナイザー(地域の教育力の組織者)」などが例示・列挙された。これらの先見を参考に,公民舘活動の基幹的役割を担う主事の職務,専門性,資格をはじめ,「館長,主事その他職員の資質及び能力の向上を図るため,研修の機会の充実」(「公民館の設置及び運営に関する基準」(第8条第3項)のあり方等に関する研究の推進がまたれる。なお,その際には,近年の,地方分権化や指定管理者制度の導入などを視野に入れて,専任主事と嘱託(非常勤)主事との異同についても論議される必要がある。
 
 
 
  参考文献
・宮地茂『改正社会教育法解説』全日本社会教育連合会,昭和34年
・福原匡彦『社会教育法解説』全日本社会教育連合会,昭和51年
・全国公民館連合会『公民館のあるべき姿と今日的指標』,昭和43年
 
 
 
 
  



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