登録/更新年月日:2009(平成21)年12月30日 |
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【住民ボランティアの自己実現・変容と地域参画】 まず重要なのは、普段の家庭生活や職業生活とは異なる活動の場をボランティア個々人が経験することによる、自己実現・自己変容の意義である。新たな活動の場を得ることは、個人の領域ではまず能力を活用する場を得るという意義が挙げられるが、それに加え、ボランティア自身の意識・行動の変容も注目される。すなわち、新たな能力の獲得、学習の深化や、自身のライフコースやキャリアの振り返りにもつながりうる。社会との関わりという領域では、ボランティア活動の経験が、地域での交流の広がりを産むだけでなく、長期的に見た場合、他の学習活動や社会参画の形へと転移・拡張していく意義も認められる。 また行政と住民との関係という視点から見れば、住民ボランティアが社会教育行政に参画することを通して、行政と地域住民とのパイプ役、地域づくりの中核としての存在を担うの参画を担う経験としての意義も認められる。 【ボランティア経験の意義を高める制度的環境】 社会教育行政における住民ボランティアの導入においては、ボランティア自身が自己実現・変容の意義を実感できるような制度・実態となっているかが問われる。「無償性」を前提とするボランティア活動では、自己実現・自己変容としての非経済的なメリット・意義をボランティアが実感し、活動を引き続き長く続けていきたいと感じさせる活動環境となっているかという点が重要となる。 この点は、ボランティア活動に参加する住民の動機・期待と、ボランティアを委嘱する自治体社会教育行政側の期待とがマッチングしているか、という問題とも関連している。例えば、社会貢献、生きがいという抽象的な動機よりも、「音楽や演劇が好きだから」「劇場やホールの仕事に興味があったから」という動機で文化施設でのボランティア活動に参加する者が大半を占めるという調査結果がある。この場合、ボランティアに単なる補助的要員としての役割を行政側が期待すると、ボランティアの意識と行政の期待とは大きく乖離することとなる。これに関連して、住民に対し、ボランティア活動の実際の内容に関する情報を、行政側が活動を希望する住民に対して事前に適切に伝えているかという点も、問題となってくる。 【住民参画と利用者・参加者】 住民ボランティアの制度の適切さは、ボランティアの実感する意義の視点からだけでなく、ボランティアという形での住民参画が社会教育施設運営や事業企画の変化という形で反映されているか、という点からも捉えられなければならない。そのためには、行政職員やボランティアだけでなく、施設利用者・事業参加者の意識もふまえた上で住民ボランティアの制度が検討することも必要である。 br> |
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参考文献 ・地域創造『公共ホール・劇場とボランティアに関する調査』1997年 ・小川誠子「社会教育施設ボランティアの学びに関する序論的考察 −「正統的周辺参加」概念を通して−」『日本生涯教育学会年報』第20号、1999年 ・社会教育施設ボランティア研究会編『社会教育施設ボランティアの自己形成V −調査データの理論的検討−』1999年 ・社会教育計画研究会編『社会教育施設の非常勤職員・ボランティアに関する調査研究報告書』2005年 ・社会教育計画研究会編『社会教育施設ボランティアの自己形成に関する経時的研究U』、2009年 |
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