登録/更新年月日:2009(平成21)年12月30日 |
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【住民ボランティアの類型】 現在、自治体の社会教育施設、社会教育事業の運営において、地域住民のボランティアが不可欠な役割を担っているケースが少なくない。そのようなボランティア制度は地域の実情に応じ、いくつもの側面で多様性を有している。 第一にボランティアの活動する場の多様性である。公民館、図書館、博物館、生涯学習センター、女性教育施設、青少年教育施設、文化施設など、さまざまな社会教育施設において住民ボランティアが活動している。また、特定の活動の場としての社会教育施設はないが、自治体行政の社会教育事業の企画・運営に関わるボランティアも存在する。 第二に、職員とボランティアの役割分担の多様性である。常勤・専門職員による事業企画・実施や施設運営を補助する補佐的なボランティア、逆に、社会教育施設などの現場には常勤・専門職員がおらず、事業の企画・運営を自ら中心となって担う中核的なボランティア、またこの両極の中間に位置するボランティア制度もさまざまに存在する。また同一自治体・同一制度の下でも、現場によって職員とボランティアとの役割分担が異なる場合もある。 これ以外にも、どのような形でボランティアを募るか(公募、地域団体や社会教育施設利用者からの推薦など)、ボランティア自身による独立した組織が作られているか否か、などの側面で多様性が見られる。 【住民ボランティア制度の意義と課題】 住民ボランティアの活動は、新たな形での社会教育行政への住民参加、住民同士の地域交流の促進、住民の能力獲得・能力活用、といった意義を一般に期待されている。社会教育施設における職員の異動が頻繁である場合、住民ボランティアの方が職員よりも地域の学習需要・実情や講座・教室の企画運営に詳しいこともあり、社会教育行政の事業展開にボランティアが重要な役割をもつことも少なくない。 他方、社会教育行政における人件費削減に対応する方策として住民ボランティアが導入されているという側面も大きい。このことと関連して、ボランティアを導入することで、社会教育施設における専門的職員の不在、充実した学習支援の欠如につながるという議論もある。例えばボランティアを活用する文化施設を自治体規模別に見ると、都道府県立、市立に比べ町立の割合が遙かに高く、職員不足の傾向にある非都市部の文化施設が、住民ボランティア活動に依存する構図が見てとれる。社会教育行政における住民ボランティアの導入は、社会教育経費節減のための住民動員になりかねないという側面も抱えている。 br> |
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参考文献 ・社会教育施設ボランティア研究会編『社会教育施設ボランティアの組織と運営に関する事例調査』1999年 ・久井英輔「文化施設の活動と経営をめぐる問題」鈴木眞理、守井典子編『生涯学習の計画・施設論(生涯学習社会における社会教育6)』学文社、2003年 ・社会教育計画研究会編『社会教育施設の非常勤職員・ボランティアに関する調査研究報告書』2005年 ・久井英輔、伊藤真木子、井上伸良「自治体社会教育事業におけるボランティアの意識構造 −活動の意義実感、継続志向に関する分析を中心に−」『日本生涯教育学会論集』第30号、2009年 |
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