登録/更新年月日:2008(平成20)年9月9日 |
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【定義】 キー・コンピテンシーとは、「特定の状況の中で(技能や態度を含む)心理社会的な資源を引き出し、動員することにより複雑な需要に応じる力」であり、自律的に活動する、異質な集団で交流する、道具を相互作用的に用いるの3つのカテゴリーとそれぞれさらに下位の3つのコンピテンシーから構成される。その核心には、考える力がある。 【説明】 キー・コンピテンシーは、個人の属性とその人が働きかける文脈との相互作用の生産物であり、その習得により、社会や個人にとって価値ある成果が得られる、多様な状況における重要な課題への適応の助けとなり、すべての個人にとって重要な力となる。 1.道具を相互作用的に用いるコンピテンシーは、 A) 言語,記号,テクストを相互作用的に用いる力、 B) 知識や情報を相互作用的に用いる力、 C) 技術を相互作用的に用いる力、 から成る。道具は、人が周りの環境と積極的な対話を行う装置とされ、コンピュータのようなものだけでなく、知識や情報、技術といった文化的道具を含む。人が世界や他者と対話し、相互作用する道具をどう活用できるかが重要となる。PISAの読解力(reading literacy)、数学リテラシー(mathematical literacy)や計算リテラシー(numeracy)は、コンピテンシーAを具体化している。 2.自律的に活動する力は、 A) 大きな展望の中で活動する力、 B) 人生計画や個人的活動を設計し実行する力、 C) 自らの権利,利害,限界やニーズを表明する力、 から成る。自律的に活動するとは、明らかな自己概念を伴い、意思を持った行為を行えること、つまり決定や選択、自らの欲求や要求を実際の活動に置き換える力である。 3.異質な集団で交流する力は、 A) 他者と良好な関係を作る力、 B) 協力する力、 C) 争いを処理し,解決する力、 から成る。人生を通じ、人は他者との絆を必要とするので他者と共に学び、働き、円滑に交流する力が求められる。家族や地域の絆が弱くなる時代に、新しい人間関係を形作り、良好な関係を図る力は、個人にとっても新しい社会を作る上でも重要である。社会参加(社会的包摂)、ソーシャルスキル、異文化間能力などの用語と関係する力である。 生涯学習活動の中でキー・コンピテンシーは、人生の多様な状況の課題解決の力となり、社会や個人に価値ある成果をもたらすという効果が期待されているが、人により重要なコンピテンシーは生涯にわたり成長、衰退、変化するとされる。 PISAは、このキー・コンピテンシーを概念的な基礎として国際調査を続けているが、OECDは2004年から2005年にかけて、さらに新たな国際調査として成人コンピテンシーの国際評価プログラム(通称PIAAC、the Program for the International Assessment of Adults Competencies)の検討を開始し、2011年より本調査を実施することとなった。子どもの学力や成人力の標準としてこうしたキー・コンピテンシーが用いられるような状況は、教育の国際化をさらに促進する。ECは、OECDのキー・コンピテンシーをさらに実践的な枠組みにしたものとして、2006年に「生涯学習のためのキー・コンピテンシー」という提言を行った。 br> |
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参考文献 1)ライチェン他著『キー・コンピテンシー−国際標準の学力をめざして』立田慶裕監訳、今西幸蔵、岩崎久美子、猿田祐嗣、名取一好、野村和、平沢安政訳、明石書店、2006 2)立田慶裕「成人の学習能力についての考察−生涯学習社会の文脈から」日本生涯教育学会年報23号、17-37頁、2002 |
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