生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年9月9日
 
 

キー・コンピテンシーと生涯学習 (きー・こんぴてんしーとしょうがいがくしゅう)

キーワード : 考える力、生きる力、リテラシー、教育の国際化、PIAAC
立田慶裕(たつたよしひろ)
3.生涯学習のためのキー・コンピテンシー
  
 
 
 
  【説明】
 EC(European Commission)は、2006年12月に「生涯学習のためのキー・コンピテンシー−ヨーロッパの準拠枠組み」と題した提言を行った。この提言では、コンピテンスを、知識、スキル、態度の組み合わせとして定義し、次の8つをあげている。
1)母語(第一言語)のコミュニケーション
 この力は、聞き、話し、読み、書くといった口述形式や記述形式により、自らの概念、思想、感情、事実や意見を表現し、解釈する能力であり、広い範囲での社会的文化的背景の中で適切で創造的な方法で言語的な相互作用を行う力である。
2)外国語のコミュニケーション
 これは、言語面で母語でのコミュニケーションと両翼を担う力。多様な社会的・文化的文脈の中で、自分の要求にしたがい、口述や記述の形式により、概念や思想、感情、事実や意見を理解、表現、解釈する力を基礎とする。
 外国語のコミュニケーションはまた、異文化間の理解や仲裁といったスキルも求められる。
3)数学と科学・技術の基礎的コンピテンス
 数学力は、日常の問題解決のために数学的思考を発達させ応用する。初歩的計算能力の熟達を基礎とし、数学的思考(論理的・空間的思考)や数学的表現(公式、モデル、作図、グラフや表)を使う力と意思に加え、数学的知識を用いる過程や活動も含む。科学の力は、疑問を持ち、自然界を説明する知識や方法論を活用して、証拠に基づく結論を導こうとする。技術の力は、人間の要求に応えるための知識や方法論を道具を用いる力。
4)デジタル・コンピテンス
 ICTスキルを基礎に、仕事や余暇、対話のために情報社会技術(IST)を確信的で批判的に活用する力。コンピュータを用い、情報の発見、診断、蓄積、生産、表現、交換を行い、インターネットのネットワークに参加し対話する力。
5)学習法の学習
 時間や情報の効率的な運用を通じて自分の学習を方法的に系統立て維持続行する力。動機付けと信頼が重要。自分の学習過程やニーズに気づき、学習機会を探し、学習を成功に導き障害を越える力。また、新しい知識や技能を獲得して処理・吸収するだけでなく、適切な学習指導を得て活用することも含む。この力は、初期学習や人生経験に基づき、多様な文脈で知識やスキルを活用し適用する中で学習者が形作られる。
6)社会的な市民のコンピテンス
 対人的能力、異文化間能力を含み、個人が徐々に広く大きな社会生活や職業生活へと効果的で体系的な方法で参加し、多様な葛藤を解決できるように個人を備えるすべての形態の行動を含む。市民のコンピテンスは、社会的政治的概念や制度の知識と活動的で民主的な参加の責任を基礎に、市民生活に参加できる力。
7)進取のセンスと企業家精神
 アイデアを行為に移す個人の能力。創造性、革新性や失敗を恐れない姿勢を意味し、目標を達成するため企画を運営する力である。家庭や社会の日常生活だけでなく、職場でも仕事の状況に気づき、チャンスをつかむのに役立ち、社会活動や商業活動の創始や貢献に必要な知識やスキルの基礎となる。
8)文化的気づきと表現
 アイデアや経験、感情の、音楽・劇・文学や視覚的芸術といったメディアによる創造的な表現の重要性に気づき、表現する力である。
 
 
 
  参考文献
1)立田慶裕「生涯学習のためのキー・コンピテンシー」『生涯学習・社会教育研究ジャーナル』第1号,157-198頁,2007
2)European Commission "Key Competences for Lifelong Learning:European Reference Framework"European Communities,2007
 
 
 
 
  



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