生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2013(平成25)年8月29日
 
 

生涯学習支援ネットワーク診断のためのガイドライン試案 (しょうがいがくしゅうしえんねっとわーくしんだんのためのがいどらいんしあん)

キーワード : ネットワーク診断、社会ネットワーク、診断項目、資源の到達可能性、連携・協力
浅井経子(あさいきょうこ)
2.生涯学習支援ネットワーク診断のためのガイドライン作成の方法
 
 
 
 
  (1)診断領域・項目設定
 生涯学習支援ネットワークの診断領域には社会的ネットワークの特性の観点を中心に4領域を設定し、診断項目については組織間ネットワークや個人間ネットワークの特色、ペトリネットの性質2)、情報通信ネットワークの診断フレームワーク3)等を参考に設定した(表1を参照)。
◆ネットワークの特性に関する領域
 山本恒夫は個人間のネットワークについては須藤修の論に基づき、組織間ネットワークについては寺本義也の論に基づき、下記の特色をあげている。生涯学習支援ネットワーク診断では個人でも組織でも参加できるネットワークを考えているので、個人間ネットワークのaからdと組織間ネットワークのアからウを取り上げることにした。
○個人間ネットワークの特色
a.ネットワークへの参加や脱退は自由である。
b.参加者の独立性や個性を尊重しながら、連帯や全体への貢献をする。
c.権限と責任が分散されており、情報が横に伝わる。
d.多くのリーダーをもち、参加者すべてが参加者であるばかりか、参加者間をつなぐ存在であることを自覚しなければならない。
○組織間ネットワークの特色
ア.組織が一定の独立性を保ちながら、一定の関係づけの中で相互に依存して いる。
イ.組織が横に水平につながり、異質性を許す。
ウ.組織間の関係は固定化されず、柔軟でダイナミックである。
エ.組織間で何らかの交換が生じている。
オ.相互作用は互恵的である。
◆活動目的・ミッション・目標に関する領域
 今回取り上げる生涯学習支援ネットワークは目的を掲げた機関等に集まるネットワークなので、目的や方向性が見失われないようにする必要がある。そこで、活動目的・ミッション・目標が明確にされているか、メンバー間で共有されているかという観点から診断項目を設定した。
◆資源の到達可能性に関する領域
 社会的ネットワークにあっては資源交換が可能でなければならないので、フローの状態を診断する必要がある。それは社会的ネットワークの性質としての到達可能性の診断ともいえる。診断項目の設定にあたっては、上記の組織間ネットワークのうちのエとオ、およびペトリネットの性質、山本恒夫のネットワーク診断項目等を手がかりにした。
 なお、山本恒夫のネットワーク診断の項目とは、次の項目で、ペトリネット等を参考にしたものである。
@.指向性(ネットワークでの学習資源開発や生涯学習支援サービスの目指す方向が人々のニーズや地域課題に応えられるようになっているか
A.可逆性:各メンバーが資源提供・受容の両方共に可能になっているか)
B.保存性:各メンバーの資源提供と受容のバランスがとれているか
C.活性:資源交換が停滞しないようなネットワークになっているか
D.充足性:資源交換の需要がどの程度充足されているか
E.迅速性:資源交換がどの程度迅速に行われているか
◆資源に関する領域
 上記の「資源の到達可能性に関する領域」の前提には、資源の問題があるので、資源関係の項目をあげた。
 添付資料:表1 診断領域別診断項目
 
 
 
  参考文献
・坂井知志、山本恒夫「高度情報化にともなう新しい生涯学習支援システムの構想」日本生涯教育学会論集19,1998年。
・須藤修「社会システムとネットワーク」新田俊三編『社会システム論』日本評論社、1990年。
・寺本義也『ネットワーク・パワー、解釈と構造』NTT出版、1990年。
・山本恒夫・浅井経子・手打明敏・伊藤俊夫『生涯学習の設計』実務教育出版、1995年。
・陳立行「社会的ネットワークの理論的再検討」『年報筑波社会学会』(1)、1989年。
・奥川峻史『ペトリネットの基礎』共立出版株式会社、1995年。
 
 
 
 
 



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