登録/更新年月日:2006(平成18)年10月31日 |
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出前講座の特徴は、学習者の講座への関わり方と、その仕組みにある。 まず、前者の特徴としては、学習者が出前講座に主体的に関わっているということがある。そのような特徴としては、以下の3点が挙げられる。 1)学習者の申し込みにもとづいて、その都度、講座が開催されること。 従来からの学習機会等提供においては、先述したように、事業提供者が予め講座内容、開催日時等を決定し、その後に受講者を募っている。そのため、出前講座のように学習者からの申込みに応じて、その都度、講座が開催されるということは行われていない。 2)学習者が講座の開催場所の確保、受講者の募集を行うこと。 先述のように、従来からの学習機会等提供では、事業提供者が講座の開催場所の確保、受講者の募集を行っているが、出前講座では、それらを学習者が行っている。 3)学習者と事業提供者が相談して、講座内容を企画したり開催日時を決定すること。 従来からの学習機会等提供では、予め、事業提供者によって講座内容や開催日時が決められている。一方、出前講座においては、それらを学習者と事業提供者が相談して決めるため、学習者が講座内容の企画や開催日時の決定に主体的に関わっているといえよう。例えば、開催日時については、出前講座の開催が可能な時間帯のうち、学習者の都合のよい時間が選ばれることになっている。 次に、後者の出前講座の仕組みに関する特徴としては、出前講座が学習機会等提供のために、生涯学習機会等提供ネットワークを構築していることにある。ここでいう生涯学習機会等提供ネットワークは、「学習機会等提供のために、生涯学習関係機関等が連携・協力する仕組み」(大西2005)である。学習機会等提供に関しては、学習ニーズの把握に関する問題、学習内容の多様性に関する問題、時間や場所の制約に関する問題が生じていると考えられるが、上述のようなネットワークの構築は、そのような問題の解決策として有効であると考えられるのである。 その理由は、ネットワークの構築によって、ネットワークに参加している生涯学習関係機関等間での学習資源の交換や貸借が可能となることにある。生涯学習関係機関が個別に把握した学習ニーズに関する情報は、ネットワークによって他の生涯学習関係機関と共有することができる。また、学習内容、開催時間、開催場所の多様な学習機会等提供を行うためにはより多くの学習資源が必要となるが、ネットワークによって、他の生涯学習関係機関から学習資源を貸借することができるため、学習機会等提供のために利用できる学習資源を増やすことができる。ネットワーク構築の意義は、そのような学習資源の交換や貸借が可能となることによって、生涯学習関係機関が学習機会等提供の際に利用できる学習資源を増やせるところにあるのである。 このようなネットワークの構築は、ネットワーク型行政を実現するためにも必要である。また、生涯学習推進は総合行政として行われる必要があるとされているが、そのためには、行政内の各部課局は、その属性に関わりなく連携・協力する必要があるのである。出前講座は、行政全体で取り組まれている事業であるとともに、学習のためのネットワーク型行政が初めて実現された例である。今後は、このような事業が、よりいっそう活用される必要があると考えられる。 br> |
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参考文献 ・大西麗衣子「出前講座の参加部課局・施設の準備行動に影響を及ぼす要因」日本生涯教育学会論集26、平成17(2005)年 ・今野雅裕・上條秀元・廣瀬隆人「生涯学習による地域づくりの現状〜自治体の動向〜」日本生涯教育学会論集22、平成13(2001)年 ・山本恒夫他『生涯学習の設計』実務教育出版、平成7(1995)年 ・社会教育、Vol.51 No.12(特集;生涯学習まちづくり出前講座)、全日本社会教育連合会、平成8(1996)年 |
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