生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年3月15日
 
 

青少年と職場体験 (せいしょうねんとしょくばたいけん)

young people and job-experiencing program
キーワード : 職場体験、就業体験、職業能力の開発、インターンシップ、職業教育
坂本登(さかもとのぼる)
2.動向
 
 
 
 
   昭和20年代から30年代にかけて,職業教育は,社会教育の重要課題であった。当初の公民館構想には「産業指導所」の機能が期待され,青年教育では産業教育・職業教育が必須のものとされ,青年学級は職業に関する知識技術等の習得を目指して展開され,青年の家はその使命・役割のひとつに職業教育が据えられて登場した。
 しかし,今日の青少年の職場体験は,学校が中心的な役割を担って推進され,小・中学校では進路指導,総合的な学習などに関連づけて「職場体験」,高校や大学では「インターンシップ」などと呼称して実施される例が多い。従来,観念的な教育は学校教育で,実際的な学習は社会教育で,という棲み分けが図られてきたが,今日の状況は,従来の固定観念が覆され,青少年の職業教育が社会教育から学校教育へと重心移動した感がある。この背景には,高校や大学への進学率の上昇があり,青少年が学校に抱え込まれ,社会教育における青少年の不在現象がある。この結果,社会教育・青少年教育における職業教育は停滞・消滅へと向かっている。
 代わって登場してきた課題は,青少年をめぐる少子化,核家族化,社会や自然との乖離,遊びの場・機会の喪失などである。これらが,青少年の自主性,自律性,判断力,創造力などを低下させていると,彼らの生きる力を高めるためには,多様な体験機会を拡充する必要がある,という考え方が人口に膾炙する。こうしたなか,社会教育審議会は,「青少年の徳性と社会教育」(昭和56(1981)年)等の答申などによって,青少年が職場などで実践的で多様な社会参加体験を通して自己を確立していくことの重要性を提唱した。
 ここに至って,青少年の職業教育の一環としての職場体験は,社会体験の一例となる。この象徴が学校五日制の導入である。この実施直前の平成4(1992)年2月,「社会の変化に対応した新しい学校運営等の在り方について(審議のまとめ)」と「休日の拡大等に対応した青少年の学校外活動の充実について(審議のまとめ)」が発表され,学校教育と社会教育の観点から,青少年の人間形成には多様な生活体験,自然体験,社会体験などが不可欠であるという認識のもと,五日制導入後の方策や留意点が示された。その後,学校教育法と社会教育法の改正(平成13(2001)年7月),学校五日制の完全実施と「総合的な学習の時間」の創設(平成14(2002)年度から)などによって,体験活動を推進する環境が整っていく。
 また,中央教育審議会は,「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」の答申(平成14(2002)年7月)で,多様な体験を重ね,豊かな人間形成と将来の社会参加の基盤作りを進めるため,初等中等教育段階の学校が進める体験活動として「勤労生産にかかわる体験活動」と「職場や就業にかかわる体験活動」を例示した。さらに,「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」(平成16(2004)年1月)でも,児童生徒のキャリアの発達支援とキャリア形成を図るうえでは職場体験が重要である,ことを確認している。
 終身雇用制などのわが国の伝統的な雇用制度の崩壊,ニートやフリーターの増加など,社会・経済の進展とシステムが変化するなか,青少年の職場体験の機会とその支援は,より早い時期に向けられ,学校教育を中心に推進される傾向をより顕著にしている。
 
 
 
  参考文献
・社会教育審議会答申「青少年の徳性と社会教育」(昭和56年)
・「社会の変化に対応した新しい学校運営等の在り方について(審議のまとめ)」平成4(1992)年2月
・「休日の拡大等に対応した青少年の学校外活動の充実について(審議のまとめ)」平成4(1992)年2月
・中央教育審議会答申「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」(平成14年7月)
・「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」(平成16年1月)
 
 
 
 
 



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