登録/更新年月日:2008(平成20)年4月25日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
【学習集団内の気づき過程】 学習集団内の親の気づきプロセスについては、その理念型を次のように設定できる(添付ファイル図2)。図2では、気づきの状態を「即自」と「対自」と「対他」に分け、その発展上に「対自=対他」を設定した。「即自」とは無自覚に認識できる「そのままの自分」である。ただし、「対自」や「対他」から何度も立ち戻った末の深いレベルの「即自」は、いわゆる自然体の「あるがままの自分」が想定される。「対自」とは自己を客観的に認識する「もう一人の自分」が想定される。これも表層的な自己否定から深層の自己受容に至るまで、いくつかのレベルが想定される。「対他」とは「自己とは異なる他者の存在」への気づきである。これも、「ほかの人も自分と同じ」というレベルから、「異なる他者への共感や自他受容」などのレベルまで数段階のレベルが考えられる。 さらに、実際の子育て学習の気づきプロセスにおいては、上の理念型とは異なる社会化パターンがあると考えられる(添付ファイル図3)。図3の太線矢印のように、対自から直線的に社会への気づきに結びつくなどのケースも見出されるであろう。それぞれのケースを分析することにより、現実の親の社会化パターンを整理し、類型化することができる。 【青少年の親能力獲得過程】 現代青年の「未来の親」としての能力獲得支援は、大きな困難を抱えていると言わざるを得ない。とくに、結婚、出産、子育てのもつ社会的側面については、今や多くの青年にとって魅力のないもの、「他人事」になってしまっていると考えられるからである。 筆者らは、ワークショップ手法を導入した大学授業において、女子学生に出産自己決定のための能力チャートを作成させて、そのプロセスを検討した(添付ファイル図4)。教師の指導内容と空白時間を分析した結果(添付ファイル図5)、未来の親も、現役の親と同様に、対自、対他の気づきと比較して、対社会の構えには、建前的なものに陥りがちで、自己を主体的に位置づけることが困難になっていることが指摘できた。 現役の親の学習支援研究においては、直接的に問題解決の答やストーリーを求めようとする親に対して、「他の親との相互受容のなかでの悩みの交流」により、他者や自己への気づきを循環、深化させることの効果が明らかにされた。しかし、同時に、「わかる」とか「同じ」などの受容をしあうことによって、逆に対自や対家族、対社会への気づきを阻害してしまう傾向も見出された。この点では、未来の親に対しても、対他者関係の位置づけ、自己内対話の促進、課題・目標の自己設定と共同設定が、親になるための社会化達成のためには効果的であるということができる。 さらに、青少年の社会参画は、他者との差異に関する個人の気づきを明確化し、学習集団のなかでその差異を生産的な方向で組織化することにつながるといえる。これが、学習者の自他受容をより深いものにし、出産、子育てを、社会に対して自負できる行為として認識する拠り所になるといえる。 br> 添付資料:子育て学習の構造図表 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 ・西村美東士「子育て学習の構造的理解序説−親の社会化支援の視点からの整理」、聖徳大学児童学研究所紀要『児童学研究』No10、2008年3月 |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |