生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2011(平成23)年1月1日
 
 

日本生涯教育学会における生涯学習研究30年 (にほんしようがいきょういくがっかいにおけるしょうがいがくしゅうけんきゅうさんじゅうねん)

キーワード : 生涯学習、研究主題、研究手法
久井英輔(ひさいえいすけ)
2.日本生涯教育学会における研究主題の傾向とその変化
 
 
 
 
  【主題別分類でみた研究傾向の把握方法】
 図表2では『年報』における研究主題の傾向を、10年ごとに時期区分して示した。また,1998(平成10)年以降刊行されている『日本生涯教育学会論集』(以下『論集』)における研究主題の傾向は、時期区分せずひとまとめにして示した。複数の主題に関連していていずれが主要とも定めがたい場合は,単一の論考を複数回カウントしている。なお、研究主題に関するカテゴリーが多岐にわたるため,ここでは「総論」「生涯学習の場に関する視点」「生涯学習支援に関する視点」「学習者把握の視点」と、各カテゴリーを関連性の高いもの同士でまとめ、四つに大区分した。
【総論的考察の傾向と変化】
 まず注目されるのは「生涯学習の原理」に関する論考数の変化である。80年代の学会創設期において割合の大きかった論考数が,90年代に一度少なくなり,2000年代に再び多く見られだす。90年代の総論的論考の少なさは,この時期の『年報』の特集が個別具体的論点を扱うことが多かったことと関わっている。また,2000年以降は、特に社会構造とその変化という視点から生涯学習社会のあり方に焦点を合わせた総論的論考が特に多く見られる。
【生涯学習の場に関する視点からの考察の傾向と変化】
 この中では特に、「生涯学習と学校・大学」がどの時期においても主題として多く扱われている。「生涯学習と地域社会」がそれに次ぐ。「生涯学習と学校・大学」について詳しく見ると,『年報』ではどの時期においても大学その他高等教育機関における生涯学習を主題とする論考が,小・中・高等学校その他の初等・中等段階の学校教育における生涯学習を主題とする論考よりもやや多い。他方『論集』ではむしろ学校教育における生涯学習を主題とする論考の方が多い。なお,90年代まではほとんど扱われてこなかった「生涯学習と家庭教育」を主題とする論考が,2000年代に入ってから比較的見られる。2001年社会教育法改正によって家庭教育に関する規定が明文化されるなど,政策面での家庭教育支援への動きが,その背景の一つにあると考えられる。
【生涯学習支援の視点からの考察の傾向と変化】
 この中でどの時期においても多く見られる主題が,「生涯学習関連行政,支援システム」である。学会創設以来,生涯教育における「統合」がどのように具現化されるかが本学会において継続的に重視されてきたことが改めて確認される。中でも,事例紹介や政策動向に加え,(研究手法の動向にも関わるが)生涯学習支援のシステム,ネットワークを数理モデルを用いて分析する考察が特に90年代以降手がけられてきたことが特色といえる。
【学習者把握の視点からの考察と変化】
 この中では、「青少年期の生涯学習」がどの時期においても最も多く,特に『論集』で顕著である。青少年期以外で,年齢別にみた学習者とそれを対象とした事業実践に関する論考の割合はやや減少傾向にある。これらは,「生涯各期の課題」・「生涯各期に必要な学習」という視点よりも,成人の学習活動の個別化という視点で学習者を捉えようとする研究・実践傾向が強くなってきたことと関わってると考えられる。また,「女性・男性の生涯学習」のほとんどは,「女性」(または「母親」)という属性に注目した論考である。
 添付資料:図表2 『年報』・『論集』における研究主題の傾向とその変化
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
 



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