登録/更新年月日:2011(平成23)年1月1日 |
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【手法別分類でみた研究傾向の把握方法】 図表3では,図表2と同様に『年報』『論集』における研究手法の傾向を示している。 【原理・思想的研究/現状・動向の分析】 「原理・思想的研究」は,90年代に一度割合が低下するが,2000年代には再び増加する。学会創設期に原理・思想的な研究が特に必要とされていたこと,また2000年代に入って,生涯学習の理念・概念の根幹を問い直す考察が必要とされてきたことが背景にあるだろう。また,「現状・動向の分析」が『年報』では一貫して増えている。『年報』が,生涯学習を巡る政策的,制度的な変化をトレースする役割としての位置づけを次第に強めてきたものといえる。 【計量分析に基づいた研究】 『論集』では半数以上の論考が,「計量分析に基づいた研究」に当てはまる。『論集』刊行に伴い,個々の学会員の関心に基づく実証的研究の論考の多くが,『論集』に掲載されるようになったものであろう。計量分析の具体的な手法をみると、『年報』では80,90年代において単純/クロス集計・記述統計量などシンプルな手法のみに基づく論考と、多変量解析・統計的検定を用いた論考とが同程度に掲載されているが、2000年代になるとほとんどが多変量解析や統計的検定などを用いたものとなる。一方,『論集』においては,シンプルな手法を用いた論考も多く見られる。多変量解析・統計的検定の手法を細かく見ると,80・90年代にかけては数量化理論,χ2検定,分散分析が大半を占めていた。しかし90年代後半以降,回帰分析,因子分析が多く見られるようになり,またその他の手法も多様化している(共分散構造分析,判別分析,多重比較,ノンパラメトリック検定,ブール代数など)。 【質的調査に基づいた研究】 「質的調査に基づいた研究」(インタビュー,自由記述,参与観察など)は,『年報』ではわずかであるが,『論集』では,主流の手法とはいえないまでも比較的多く見られる。また80,90年代では分析手法は比較的素朴であったが,近年では,ライフストーリー(ライフヒストリー)の視点に立ったインタビュー手法,参与観察・インタビュー・自由記述式質問紙法を組み合わせたデータ収集,インタビューデータの丹念なコード化など,手法の精緻化も見られる。 【海外研究・国際比較研究】 この中では、英語圏の事例・動向を対象としたものが多数を占める。ただし、『年報』では半数程度であるのに対し,『論集』では大多数が英語圏の事例を対象とする研究である。『年報』では特集テーマや「諸外国の生涯教育」への寄稿によって,言及される国・地域の多様性が比較的保たれているが,『論集』では言語的にアクセスしやすい英語圏対象の研究が中心となっているといえる。なお,明確に「比較」研究の視点をもった研究はわずかであり、政策提言への示唆を有する国際比較研究の拡大が今後待たれる。 【歴史研究】 歴史研究は特に90年代以降、『年報』『論集』ともにわずかしか見られなくなる。生涯学習に関わる歴史研究では,実践上の明確な意義付けと,歴史的手法の厳密さを両立させて記述することの難しさがある。しかし喫緊の課題への対応としての研究だけでなく,長期的・大局的視点をもつ研究の多様性を学会内で保つという意味でも,歴史研究の充実は今後の課題といえる。 br> 添付資料:図表3 『年報』・『論集』における研究手法の傾向とその変化 |
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参考文献 |
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