生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年11月7日
 
 

大学と学社融合 (だいがくとがくしゃゆうごう)

university and school-community fusion
キーワード : 関係づくり、学びの共有化、大学の第三の機能、人材育成と実践、資源的価値
濱野和人(はまのかずひと)
2.学社融合についての一見解
 
 
 
 
  【学社融合の捉え方】
 学習者及び学習支援者に視点を合わせた場合、学社融合は次のように捉えることができる。
<学習者の視点で捉えた場合>
 学校教育・社会教育・家庭教育の各領域の垣根を越えた学びの実施による互恵的な関係づくりとその相乗効果による自己学習意欲の向上を促す活動。
<学習支援者の視点で捉えた場合>
 学校・地域社会・家庭が互恵的に関係性を持つことで変化する外的要因により、子どもの内的要因に変化のきっかけを与え、成長を促す活動。
【説明・動向】
 生涯学習社会の系譜を受け、従来の学社連携論に代わり、初等中等教育における課題解決の基本的方向の一方策として学社融合は導入された。学社融合という用語が公的文書として初めて使用されたのは、平成7(1995)年「国立青年の家・少年自然の家の在り方に関する調査研究協力者会議の報告」である。次いで、平成8(1996)年の生涯学習審議会答申「地域における生涯学習機会の充実方策について」や、平成10(1998)年の中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」等で続けて取り上げられることとなった。
 学社融合は、学校・地域社会・家庭における教育者がそれぞれの役割を分担した上での融合を図るだけでなく、それ以上に、互恵的な関係を保持しつつ融合させるための理論的且つ実践的な概念である。学社融合の活動の中で、学習者は社会の諸問題に対し、自主的行動を起こし、調査・分析を行ない、解決するための方法を身に付ける。また学習支援者は、学習者に対し、時には直接関わるツール的役割として、時には間接的に関わる橋渡しのようなコネクタ的役割を担う。これらは、教育に関係するすべての人々とコンヴィヴィアル(convivial)な関係づくりの中において「学びの一体感」を創発し、「学びの共有化」へとつなぐことができる。
 しかしながら、答申のみに基づいた学社融合論は、まだまだ未成熟な実践理論であるため、人材不足や対象者への配慮といった面において問題も生じるようになっている。
 
 
 
  参考文献
・藤川吉美『大学がかわる日本が変わる―改革進む日本の大学―』公共政策研究所、2003年.
・遠山敦子『こう変わる学校こう変わる大学』講談社、2004年.
・田中美子「「自己実現型」から「社会還元型」学習への自己組織的スパイラル」全日本社会教育連合会『社会教育』、第60巻、2005年.
・濱野和人「学びの共有化とコンヴィヴィアルな関係づくり−学社融合の定義と構造−」学校と地域の融合教育研究会『年報「学社融合」、第3号、2006年.
 
 
 
 
 



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