生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年11月7日
 
 

大学と学社融合 (だいがくとがくしゃゆうごう)

university and school-community fusion
キーワード : 関係づくり、学びの共有化、大学の第三の機能、人材育成と実践、資源的価値
濱野和人(はまのかずひと)
3.大学の第三の機能を活かした学社融合の推進
  
 
 
 
  【課題・事例】
 生涯学習社会化において大きく変容することとなった「大学」と「学社融合」であるが、大学の第三の機能拡充と学社融合における諸問題の両者を同時に解決するためには、大学が積極的に学社融合活動に対して互恵的な関係を持ち、新たな学社融合サポートシステムの体系を構築することが効果的である。このサポートシステムを構築するための方策として、資源的価値である学生の「人材育成と実践」に着目することができる。これは、従来の機能(研究・教育機能)として大学は学生の「人材育成」を行ない、学生はその成果として第三の機能(地域還元)を担い「実践」するということである。
 例えば、千葉商科大学では「Univer-City」という理念を掲げている。これは、「街全体が大学であり、キャンパスである」という考えである。千葉商科大学の学生が行なっている学社融合サポートシステムとしては以下のことが挙げられる。
1)環境問題における地域還元活動
 地域還元機能を生かした実学教育として、環境ISO学生会議を中心に、聞く側から説明する側に立ち、特別講義として学生による地域小中学校への環境教育指導を展開している。この特別講義は、年に5回程度、大学生が市内小中学校へ出向き、自然環境の仕組みを理解してもらい、問題を身近に感じてもらうために、わかりやすい工夫ある体験学習を実践している。
2)DVTSを利用したインターネット中継の実施
 DVTS(デジタルビデオ中継システム:Digital Video Transport System)を使用し、市役所をはじめとした地域社会、市内の高校、大学をインターネットでつなぎ、TV会議形式で講義を展開している。この中継講義を行なうことで、高校生や大学生は、地域社会の現状を把握し、諸問題に関する解決策を検討する力を身につけることができる。また中継自体を大学生が実践しているため、この姿を見た高校生が興味を持ち「やってみたい」と感じる可能性も比較的高い。
3)3Cデザインによるまちづくりの実践
 学生有志を中心に市川市内の地域住民、大学教職員で構成している市民活動団体IEFプロジェクトが誕生した。IEFプロジェクトは地域活性化を目的としており、自主イベントや地域イベントへの参加を行ない、地域の子どもたちと関わりを持つ活動を展開している。この活動では、3C(Communication、Collaboration、Creation)による人間関係構築を通じて「人とのふれあい」によるまちづくりを実践している。
 これらのサポートシステムは個々の実践として具現化された成果だが、これらをはじめとしたサポートシステムが有機的融合による関係づくりを行ない、新たなサポートシステムを構築したとき、次世代のさらなる資源的価値の創出につながることになる。
 
 
 
  参考文献
・藤川吉美『大学がかわる日本が変わる―改革進む日本の大学―』公共政策研究所、2003年.
・遠山敦子『こう変わる学校こう変わる大学』講談社、2004年.
・田中美子「「自己実現型」から「社会還元型」学習への自己組織的スパイラル」全日本社会教育連合会『社会教育』、第60巻、2005年.
・濱野和人「学びの共有化とコンヴィヴィアルな関係づくり−学社融合の定義と構造−」学校と地域の融合教育研究会『年報「学社融合」、第3号、2006年.
 
 
 
 
  



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