登録/更新年月日:2018(平成30)年2月21日 |
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【意見対立を避ける若者たち】 青少年研究会では、平成4(1992)年、平成14(2002)年、平成24(2012)年の3回にわたって、神戸と杉並の若者意識調査を行ってきた。平成24(2012)年の調査においては、「友だちとの関係はあっさりしていてお互い深入りしない」者(交際淡泊型)は増えているが、「友だちと意見が合わなかったときには納得がいくまで話し合いをする」を否定した者(逆転項目:非交渉型)の増え方には、とうてい及ばなかった。また、「どんな場面でも自分らしさを貫くことが大切」を否定した者(逆転項目:状況対応型、肯定した者は貫徹志向型とする)は、平成14(2002)年調査からの増加率ほどではなかった。 【多数派タイプの育成方法】 上の調査結果を貫徹志向と状況対応、交渉と非交渉の2軸から4タイプを設定し、10年間の量的変化を調べた。各タイプの他との比の差について検定を行った結果(○5%有意130件、●1%有意170件)を手がかりに育成方法を書き上げると以下のとおりとなる。 @全体の3分の1近くにまで増えた「状況対応非交渉型」については、「状況対応」の苦痛を示す特徴が多く見られ、交友関係、自己意識、社会意識の多くの項目で、個人化・社会化の未達状況が見いだされた。これは、それぞれの多元に脈絡がないため、各状況と多元的自己との関係性が整理できていないことが原因と考える。 この多元的自己を整理する目をどう育てるのか。状況対応で自分らしさを多様に発露するとしても、自己のなかで統一的概念が見いだされているかどうかが重要である。 そのためには、他律から自律へのスムーズな移行を図るような仕事の与え方を工夫する必要がある。具体的には、たとえば自律度、責任度、交渉度の低いものから高いものへと、仕事の与え方を計画的につくりだす必要がある。また、個別支援においては、ケーススタディ的なスタイルを充実する。そこでは、アドバイスのほかは見守ることが中心となるコーチングとは違って、自立に至るまでは、当事者である若手社員により接近して「自分(上司)だったらこうやる、ああやる」というアドバイスまで行う必要があると考える。 先行調査では、「仕事について、事細かに教える」ことを希望する個人化未達の新入社員と、彼らの頻繁な相談に閉口している上司が多いというギャップが示された。しかし、これらの多数派タイプを自立へと導くためには、手間はかかるがスムーズな移行を促すための支援が必要と考える。 A同様に増加した「貫徹志向非交渉型」については、とくに親友との交友に関して、10年前と同じ消極面が見られた。また、○「自分の聴いている音楽(アーティスト)は他の音楽より優れている」、○「同じアーティストをいちずに応援し続ける」などの特徴とともに、自己肯定の傾向への変化が見られたため、いわゆる「オタク」の若者たちがこのタイプのなかに増えたと推察された。彼らに対しては、今は「すねをかじれる」状況であっても(●低年齢>高年齢、○学生>非学生)、経済的自立、職業的自立を味わわせるための、状況や場面の設定が必要と考えた。彼らに対しては、共同作業をさせる、運命共同体のような環境を提供して、どのような上下関係や役割分担がよいのか、どのように合意形成すればよいのか考えさせるなどが有効と考える。そこで交渉の場も自然に出てくるだろう。 そのためには、一人ではなく、チームでやらせたり、プロジェクトチームに所属させたりして、役割分担や役割遂行を学ばせる必要がある。そこで、進捗状況について共同討議させる。「だれが、いつ行って、どこまでやるのか」というチーム内での指示・命令を明瞭化し、これに対する本人の進捗状況報告を義務化する。このことによって、意図的に共同性を形成することが期待できよう。 br> 添付資料:都市青年調査の経時変化の分析結果図解 |
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参考文献 ・青少年研究会ホームページ http://jysg.jp ・西村美東士「この20年に若者の意識、生活、考え方はどう変化したか−個人化に対応する青年団体育成の方法を考える」、『社会教育』812号、日本青年館、pp.26-33 2014年2月 ・西村美東士「青年教育研究30年から見えてくるもの−個人化を育む社会化支援教育の今日的課題」、日本青年館『社会教育』832号、pp.32-45、2015年10月 ・西村美東士「若者との協働による価値創造の新しい方向」、日本青年館『社会教育』856号、pp.56-63、2017年10月 |
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