生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2018(平成30)年2月21日
 
 

若手社員育成の課題と方法 (わかてしゃいんいくせいのかだいとほうほう)

issue and method of training young employee
キーワード : 新入社員育成、都市青年意識調査、多元的自己、個人化社会、個人化と社会化の一体的支援
西村美東士(にしむらみとし)
1.既存調査結果から見た新入社員育成の課題
  
 
 
 
  【新入社員調査結果より】
 日本能率協会、日本生産性本部等の平成25(2013)年度の新入社員調査からは、次の結果が示されている。前者の調査では、「成長・キャリアへの関心は高いが、専門性には関心薄い」と要約されている。具体的な結果を見ると、個人化は必ずしも自己発揮には結びついていない。職業における勤勉さ、謙虚さ、自己成長などの積極面は見られるものの、創造・挑戦、専門性、自律・独立への意欲などの自己発揮関連事項については消極面がうかがわれる。ジェネラリストとしての成長志向が過去20年で最高の58.4%にのぼった。転職志向の増加、就職活動での訪問社数の増加などと考え合わせると、スペシャリストとしての自己の専門性にこだわる個人化傾向とは異なる意味での流動化傾向が見られた。後者では、調査結果は、「成長・キャリアへの関心は高いが、専門性には関心薄い」と要約されている。具体的な結果を見ると、個人化は必ずしも自己発揮には結びついていない。職業における勤勉さ、謙虚さ、自己成長などの積極面は見られるものの、創造・挑戦、専門性、自律・独立への意欲などの自己発揮関連事項については消極面がうかがわれた。
【新入社員育成の課題】
@世代間ギャップの理解
 日本生産性本部によれば、平成25(2013)年度新入社員の特徴は「ロボット掃除機型」とされているが、たとえば、昭和51(1976)年度新入社員は「たいやきクン型=頭から尾まで過保護のアンコがギッシリ」と評されていた。現在退職前の「たいやきクン型世代」が、どのように「ロボット掃除機型世代」を育てるのかという世代間ギャップ解消の視点が必要であろう。
A育成する側とされる側のギャップの解消
 前出新入社員調査では、育成する側からは即戦力よりは行動力とリーダーシップが求められる一方で、新入社員は「挨拶」「笑顔」「良好な人間関係」を重視していることが明らかになった。人間関係の希薄化などという視点よりは、仕事で成果を出すための調整力や交渉力の強化、すなわち、組織のパフォーマンスのために、良好な人間関係、すなわちメインテナンスを重視する若者をどう育成するかという視点が必要であろう。
 また、頻繁な相談に閉口している上司も多い。「仕事について、事細かに教える」などという新入社員の希望は、彼らの個人化未達状況を示すものといえる。同調査報告では、「多数の受身的な態度の新入社員は、この状態から脱却し、自発的に仕事に取り組む心構えが必要である。また、上司・先輩の回答と大きくギャップが開いた項目は両者の意識や行動のすれ違いを示唆しており、育成・指導をするうえで注意すべきことであろう。しかし、多くの企業で行われている指導・育成方法は教育担当者任せの状態であり、職場ぐるみ、組織的な対応が望まれる」としている。
 「仕事をする上でどうしても犠牲にしたくないこと」の1位である「仕事とプライベートの調和を保つ」(32.3%)については、「仕事をする上でワークライフバランスは大事な要素と認識されているが、会社選びにあたっての重視度は低い。ここに彼らの心の葛藤と矛盾があるようだ。会社に入社して仕事を始めると、必ずしもプライベートな生活ばかりを重要視しているわけにはいかないのが現実だ」として、新入社員育成の課題としての職場適応のポイントを指摘している。
 調査結果からは、「良好な人間関係」や「事細かな指示」を求める新入社員と、「組織の中での自己発揮」を求める会社、上司側とのギャップが示されている。その根源には、メンタル面も含めて「頑張ろうとするが、一人で空回りしてしまい、疲れ果ててしまう」という個人化社会の中での若者の姿がある。彼らに対する組織的対応と計画的育成のためには、彼らの個人化・社会化状況を理解するための明快な視点を設定する必要がある。
 
 
 
  参考文献
・西村美東士「若手社員育成の課題と方法−組織の中で個性を発揮する人材に育てるには」、『日本生涯教育学会論集』35号、pp.71-80、2014年9月
 
 
 
 
  



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