登録/更新年月日:2016(平成28)年1月24日 |
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外国語/第二言語学習(日本語学習も含まれる)の意義は、大きく次の二つに分けられる。一つは道具としての外国語/第二言語の獲得である。もう一つは全人的な成長への寄与である。 道具としての外国語/第二言語の獲得とは、学習者が一つまたは複数の母語以外の言語を使いこなせるようになった結果として、資格を得たり、特殊なスキルがあると見なされるようになったりすることである。例えば、運用可能な言語が増えることは、求職や仕事において有利に働く。この場合、外国語/第二言語学習は、母語に「付加された価値」を身につける行為である。また、学習の結果として獲得された外国語/第二言語は、仕事や学業における競争を勝ち抜くために有用な道具となる。一方、全人的な成長への寄与とは、資格やスキル等に還元されるような部分的能力を獲得することではなく、学習者の人格を形成する過程に貢献するということである。具体的には、母語以外の言語を学ぶという行為をとおし、学習者の視野が広がったり、認識や感性が更新されたりする。この場合、外国語/第二言語学習とは、学習者の認識や感性に影響を与えるがゆえに、学習者の全人的な成長につながる行為である。 近年、外国語/第二言語を学ぶ意義として、道具としての外国語/第二言語の獲得が強調される傾向がある。具体的には、外国語学習の目的として、外国語でのコミュニケーション能力の習得が強調されることが多い。日本語学習においても同様の傾向が見られる。しかし、日本語学習を生涯学習という観点から捉えると、全人的な成長への寄与という意義が浮かび上がってくる。学習を生涯の過程と捉え、生涯教育論を提唱したフランスの教育学者ポール・ラングラン(Lengrand,Paul)によると、人は「他では代えることのできない独自なものをもって」おり、「学校で課せられるような強い圧力に屈服することなく、生涯の連続的な各段階において、あれこれと試行錯誤をしながら、他の人とのかかわりの中で、また自分自身との対話の中で、自分の独自性をあらわしていくものである」。したがって、生涯教育において、教育とは、「生涯にわたり統合された教育(Lifelong integrated education)」であり、学習とは、人が自身の生涯で受ける家庭教育・学校教育・社会教育に加え、乳幼児教育、企業内教育、遠隔・通信教育、さらには自己教育等の中で絶えず行われる営みである。生涯学習の観点から捉えれば、日本語学習もまた、生涯における学習の連続的かつ連繋的な各段階の一部である。そのため、生涯学習としての日本語学習により得られた学びは、生涯にわたり継続される学習の一環として、現在の人生と連繋する。 br> |
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参考文献 ・竹内理「第1章学習者の研究からわかること―個別から統合へ―」(小嶋英夫・尾関直子・廣森友人編『成長する英語学習者―学習者要因と自律学習―』英語教育大学系第6巻、大修館書店、2010). ・ポール・ラングラン「生涯教育とは」 持田栄一、森隆夫、諸岡和房編『生涯教育事典 資料・文献編』日本ユネスコ国内委員会訳、ぎょうせい、1979. ・Jean-Pierre Cuq, Le français,langue seconde : origines d'une notion et implications didactiques, Paris, Hachette(collection Références),1991. |
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