登録/更新年月日:2005(平成17)年9月14日 |
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【二次利用】 エル・ネットの放送は、放送・通信法令上は「通信」という位置づけがなされるが、多数の場所で受信できるため、著作権法上は「放送」となり、番組の録画、放送、二次的な利用について出演者や番組で利用する著作物の著作権者と契約を結ぶ必要があった。通常の公共放送では、私的録画についてのみ著作権法で認められているが、エル・ネットでは公共施設であるVSAT局または受信局でのビデオ録画、及びビデオの貸し出し上映、さらにVSAT局が録画したビデオの再送信までを、二次利用の範囲としていた。 これらの行為について、文部科学省では、当初より「著作権契約システム」を作成し、「著作権契約システムの手引き」をVSAT局や受信局に配布し運用してきた。具体的には、上記の行為について、「A」「AB」「ABC」「空欄」に類型化し、著作権承諾書に著作権者が許諾しないものに×をつけてサインする。行為の類型は「著作権契約レベル」として、番組スケジュール表や番組の前後に表示して、その番組に許諾されている行為を利用者に認知させるというしくみである。 この著作権契約システムは、当初、厳格な解釈のもとに運用され、講師等から反発を受けた。たとえば、学校の授業の場面を収録する際、質問にも著作権があることから、事前にすべての生徒から承諾書をとっておくことなどである。これについては、本人や保護者に事前に書面による通知をしておくなど、次第に現実的、柔軟な運用がはかられるようになっていった。つまり実践をつみ重ねることで、著作権契約システムを中心としながら、承諾のためのノウハウを蓄積していくことが求められる。 【現状と課題】 エル・ネットの放送を受信するには、パラボラアンテナ、デジタルCSチューナーといった機器が必要である。また、イントラネット送信や一斉データ送信によるデータを受信するには、パソコンが必要であった。これらの機器の整備について、文部科学省では学習活動支援設備整備事業補助金の措置を行い、平成16年7月末でエル・ネットの構成はHUB局1、VSAT局34、受信局2187、計2222局となった。 エル・ネットは教育情報全般についての提供・交流をめざしたが、エル・ネットという名称が広く認知されるまでに時間がかかった。また、インターネットの高速化が予想以上に早いスピードで進んだこともあり、当初の目標であった5000局という受信局数には達してはいない。しかしインターネットも、画像や音声が途切れてしまうボトルネックの問題や、島嶼地域や山間地域への対応という点では課題も多い。ボトルネックの解消を目指して、エル・ネットとインターネットを融合した総合的なシステムに関しての実験も行われている。 文部科学省では平成17年度から「教育・学習情報の発信・提供の在り方に関する検討会」を立ち上げ、これからの教育・学習情報の発信・提供の在り方について有識者、大学関係者、教育委員会、学習グループのリーダー等により議論を進めている。エル・ネットは来るべき情報通信社会に向けての実験場であるともいわれている。衛星であるか地上系であるか、またはそれらを融合したシステムか、使われるネットワークについての議論はさまざまなである。重要なことは、エル・ネットの実験から得られた知見や課題を引き継ぎ、継承していくことであろう。 br> |
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参考文献 ・坂井知志「ITを活用した学習活動−エル・ネットからみえてきたこと−」視聴覚教育、(財)日本視聴覚教育協会、第58巻4月号〜第58巻9月号、2000年 |
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