生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年12月31日
 
 

児童の権利に関する条約 (じどうのけんりにかんするじょうやく)

Convention on the Rights of the Child
キーワード : 国際連合、子どもの最善の利益、児童の権利宣言、国際児童年
綾牧子(あやまきこ)
2.条約採択に至るまでの時代的背景
 
 
 
 
  【1924(大正13)年 国際連盟「ジュネーブ・児童の権利宣言」】
 この宣言は、子どもの権利が公になった最初のものと考えられる。大人が、子どもを保護する必要を自覚し、それを国際連盟レベルでの申し合わせとして、その意思確認のために宣言したものである。ジュネーブ宣言の基調をなしていた発想として、第一次世界大戦による人類的危機と戦争の犠牲者としての子どもの救済、保護という発想があったのである。つまり、子どもを保護するという発想と、その国際的な自覚は、子どもにとっての「最悪のもの」である戦争をなくそうとする思想から出発したものであった。このことは、大人の子どもに対する「最善のものを与える義務」とは何かを考える場合に、忘れることのできない歴史的教訓として銘記されなくてはならない。
【1959(昭和34)年「児童権利宣言」】
 第二次世界大戦後、1948(昭和23)年に出された「世界人権宣言」では、「すべての人は、教育を受ける権利を有すること」や「親は、子に与える教育の種類を選択する優先的権利を有すること」が規定された(第26条)。しかし、この「世界人権宣言」に加え、児童のニーズが別の文書を必要としているとして出されたのが「児童権利宣言」である。「児童は、身体的および精神的に未熟であるため、その出生の前後において、適当な法律上の保護を含めて、特別にこれを守り、かつ、世話することが必要である」(前文)とされた。歴史的に見れば、この宣言によって、子どもを人権享有の主体、そして権利行使の主体として認知(社会的承認)し、「子どもに与えられる“最善のもの”」の内容を、具体的に探索しはじめた段階に入ったといえる。
【1966(昭和41)年「国際人権規約」:経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)/市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)】
 各国に対して、法的拘束力をもつ国際条約である。規約中に、児童の権利に関する条文が含まれている。たとえば、「児童及び年少者は、経済的及び社会的な搾取から保護されるべきである」(A規約、第10条)と規定されている、また、すべての児童は「未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置についての権利を有する」(B規約、第24条)ことも規定されている。つまり、これは児童の権利の初めての国際条約による承認であり、歴史的に見れば、子どもを保護する対象から人権享有の主体、そして権利行使の主体として、初めて国際的に、しかも法的に承認した画期的なできごとであった。
【1979(昭和54)年「国際児童年」】
 1959年の「児童権利宣言」から20年を経た1979年が「国際児童年」とされた。そして、1966年の「国際人権規約」を背景に、「児童権利宣言」を「権利宣言」で終わらせずに、「条約」にしようと提案、可決された。その10年後、1989(平成元)年「児童の権利に関する条約」が国際連合にて採択されることとなる。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
 



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