生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2011(平成23)年9月22日
 
 

大学における社会人対象公開授業の実践 (だいがくにおけるしゃかいじんたいしょうこうかいじゅぎょうのじっせん)

キーワード : 社会人対象公開授業、大学公開講座、市民開放授業、社会人教養楽部
佐久間章(さくまあきら)
2.社会人対象公開授業の効果
 
 
 
 
   公開授業のメリットについて学生調査をみると、「メリットがある」は73%であり、「メリットなし(27%)」を大きく上回っている。「メリットがある」と回答した学生にその内容について聞いたところ、「社会人の取り組む姿勢が良い刺激になる(55%)」が最も多く、次いで「経験豊富な社会人の話や意見が聞ける(43%)」、「世代間交流ができる(28%)」、「授業に緊張感がでる(23%)」、「授業に活気がでる(20%)」等であった。中でも、学生が日常生活の中ではほとんど体験することのできない「世代間交流の機会」を提供しているという意義は極めて重要ではないかと考える。今後の在り方についても、64%の学生が、継続に対して肯定的であった。
 一方、教員調査では、回答者全員がメリットを実感している。その内容については、「社会人の取り組む姿勢が学生への刺激になる(62%)」が最も多く、次いで「異なる世代の意見や見方を授業に導入できる(54%)」、「社会人がいることで、授業に活気が出る(46%)」、「社会人がいることで、学生に緊張感をあたえられる(38%)」、「学生にとって社会人と接することができ良い経験となる(33%)」等であった。具体的な学生の変化について、「態度」、「私語」、「質問」、「参加度」、「提出物」の5項目で聞いたところ、35%の教員が「学生の受講態度が良くなった」と回答しており、次いで「私語が少なくなった(24%)」「質問が増えた(21%)」となっている。「参加度」、「提出物」については、「変化なし」という回答が約9割であった。マイナスの変化については、「私語」が9%あったが、他項目でのマイナス回答はなかった。
 以上のように、学生・教員双方に、学生への刺激や異世代意見の導入等によるメリットが期待でき、授業の活性化という点においても実施の意義が大きいといえる。また、データとしては把握していないが、社会人が意欲的に学習活動に取組む姿に接して、学生の生涯学習への理解がまっているのではないかと推察している。
次に、社会人受講者の視点から効果をみることとする。社会人の満足度は極めて高く、「満足」と回答する割合は約8割となっており、一方の「不満」は、1割に満たない。また、受講に伴う心身の変化について8項目の質問で調査したところ、「受講前に比べて、毎日が楽しい」が87%で最も高く、次いで「毎日の生活に張りがあるようになった(81%)」、「受講前に比べて、意欲的になった(75%)」、「受講前に比べて、毎日が充実している(70%)」、「受講前に比べて、活動的になった(55%)」、「受講前に比べて、明るくなった(48%)」、「受講前に比べて、社交的になった(34%)」、「受講前に比べて、健康になった(34%)」となっている。
 これらのことは、授業の受講によって得られたものであるのか、あるいは授業外の受講者相互の交流を促進する運営委員企画事業等によるものであるか定かではないが、多くの社会人がプラス方向での心身の変化を実感している。
 大学の公開授業には、当然質の高い学習機会の提供という重要な意義があるが、一方では、シニア世代が中心を占める本楽部の受講者には、少なからずQOLの向上といった点にも意義を見出すことができる。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
 



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