登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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【意義】 現在進められている教育改革において、教育行政における地方分権と規制緩和、教育行政・経営への住民参加の促進・民間の活力の導入、教育機関の自主性・自立性の確保、自己点検・評価の実施と公表などが模索されている。公教育のほぼ全面にわたって、教育機関・教育行政機関の「自己責任」と「説明責任」が厳しく問われ始めている。 従来、学校教育機関、社会教育施設等の管理・運営においては、細々とした法令の規定を前提に、その効率的な運用を図るという「業務的」(operational)な管理手法が基本であった。しかし今後は、内外の環境・資源の分析を適切に行い、目的と戦略を主体的に決定する「戦略的」(strategic)な経営手法への転換が図られる必要がある。 生涯学習事業を戦略的に経営しようとする場合、環境スキャニングの手法は多くの示唆をもたらすものと言える。 (1)トップマネジメントの強化 環境スキャニングの手法は、生涯学習組織の計画化プロセスにおいて、きわめて重要な役割を果たすことができる。とりわけ、計画化を中心的に担うリーダーの経営機能の強化が期待できる。 (2)参加型経営の実現 各スキャナは単に作業を行うだけでなく、情報を意味づけ、評価することを通して、生涯学習組織の計画化プロセスに参画することが可能となる。公式の職員参加の仕組みとして、優れたモデルであると考えられる。 (3)職員の力量形成 環境スキャニングのプロセスは、生涯学習事業を担う職員の常に社会の動向に気を配る資質を養うことにも資する。生涯学習経営におけるスタッフ・ディベロップメントの仕組みとしても、とらえることができる。 (4)プログラム開発への示唆 組織にとっては、生涯学習事業・プログラムに関する数多くのアイディアがもたらされる。環境スキャニングを通して、各部門の計画化機能も強化されることとなる。 (5)組織横断的なコミュニケーションの場の設定 環境スキャニングに参加するボランティア・スタッフは、通常交流の少ない他部門の職員と協働し、議論する機会を得ることができる。とりわけ大規模な生涯学習組織においては、セクショナリズムの改善にも資するであろう。 【課題】 わが国の生涯学習経営においては、これまでのところ、ほとんど実践の蓄積が見られない。日本の生涯学習組織は人的資源が限られており、環境スキャニングのような「労働集約型」の経営手法がなじまないという面も否定できない。だからといって、スキャニングを外部に委託するなどの方策は、上述の意義の多くを失わせてしまうことは明らかである。環境スキャニングをそのまま導入・模倣するのではなく、日本の生涯学習経営にふさわしい形を見いだすことができるかどうかが課題となる。 br> |
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参考文献 ・猿田真嗣「生涯学習機関における環境スキャニングの意義と可能性──ジョージア・センターの事例を中心に」(日本生涯教育学会第20回大会発表資料:未刊行)1999年 ・『米国における宿泊型継続教育センターに関する研究』(猿田真嗣研究代表、平成10〜11年度文部省科学研究費補助金(奨励研究(A))報告書)2000年 |
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