生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2005(平成17)年9月14日
 
 

地域教育経営 (ちいききょういくけいえい)

comprehensive management in education based on the community
キーワード : 教育機会・資源の共有・相互活用、学社融合、タテの統合・ヨコの統合、完全学校週5日制、学校教育の特定性
井上講四(いのうえこうし)
1.地域教育経営の概念
  
 
 
 
  【説明】
 当該の地域社会において、そこにおける様々な教育機能・資源をトータルに共有・活用し、子どもの教育と大人の学習支援の双方を複合的に実現させようとする、新しい教育経営の理念であり、教育戦略のことである。地域社会全体を基盤とした総合的な教育経営の視点であり、端的には、学校教育と社会教育の一体的、融合的な経営を求めるものとなる。ここでは、特に学校(教育)も、地域における教育機会・教育資源の一部であるという理解が重要となる。従来の、地域とのつながりを大切にする個々の学校経営の視点、あるいは社会教育の分野での新しい住民主体の協働とは異なるものである。ただし、それらと大いに命脈を通じるものではある。要するに、これまでの学校教育(行政)、社会教育(行政)、その双方の課題を、一つの連動する課題群として解決していこうとするのが、この「地域教育経営」のスタンスであり、地域(家庭を含む)における教育・子育て、大人(親)たちの学習・共生のしくみづくりを、総合的に行っていこうとするところに、これまでにない特徴がある。
 改めて、これからの教育界には、何よりも「教育」を、時間的にも、空間的にも、そしてまた(人間)関係的にも、「トータルな視点でみるということ」が求められる。教育が、様々な学習活動を通して、個々人の経験や個性の絶えざる再構成を目指すものであるならば、学習の場やその各々のつながりを、いかに有効に創り出していくかが重要な課題となることはいうまでもない。何故なら、全ての学習は、生涯に亘って、生活のあらゆる局面において、有機的・構造的な連関を有しているからである。そうした課題が、学校や教師だけに任せられる課題ではないことは明らかである。ましてや、社会教育(行政)の分野だけでは、到底無理でもある。
【実践の方向性】
 したがって、ここでは、これまでの学校教育の限界性・特定性を考慮するとともに、そこにおいて、当該地域社会と学校の、真に有効な連携・協働関係をいかに創り出していくかということになる。ポイントは、学校教育(の機能や成果)と他の教育分野(の機能や成果)との緊密な関わり(往還関係)を、時間的、空間的、(人間)関係的に、いかに創り上げるかということである。実は、これが、生涯教育(学習)論にいう「タテの統合・ヨコの統合」(vertical integration/horizontal integration)ともなる。
 そうなると、そこでの、時間と空間と(人間)関係のつながりと広がりをもった、双方向の連携・協力関係づくりは、まさに生涯に亘る学習を実現させる有効な手立てとなる。こうしてみると、例えば、完全学校週5日制をこのような観点から捉えれば、デメリット・懸念よりも、そのメリット・期待の方がはるかに大きいともいえる。すなわち、こうした取り組みや前後のつながりづくりは、一人(一ヶ所、一機関)では十分には行えないし、そもそも危険でさえもある。そうした場面々々を、いかに「学校教育」と「社会教育」の連携・協力のしくみの中で創り上げていくかである。そこからまた、「学校教育の特定性」及び、それ以外の「社会教育的なものの存在意義」が問われてくる。それ故に、とりわけ教育行政、教育機関の経営者・管理者には、そうした視点と、それに基づく経営的手腕が求められるということにもなる。
 
 
 
  参考文献
・井上講四『教育の複合的復権−「教え育てること」を忌避した社会?!−』学文社、 2001年
・井上講四『生涯学習体系構築のヴィジョン−見えているか?生涯学習行政の方向性−』学文社、1998年
 
 
 
 
  



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