生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2005(平成17)年9月14日
 
 

地域教育経営 (ちいききょういくけいえい)

comprehensive management in education based on the community
キーワード : 教育機会・資源の共有・相互活用、学社融合、タテの統合・ヨコの統合、完全学校週5日制、学校教育の特定性
井上講四(いのうえこうし)
2.地域教育経営の理論的背景
 
 
 
 
  【説明】
 「地域教育経営」の考え方が求められる理論的背景は、次の6つの視点(ステップ)から構成される。
 第一は、これまでの教育・学習に関するシステムの構造転換を予期させるものとしての、「人生の初期で終わる教育・学習」から「生涯に亘る教育・学習」ヘの発想の転換である。これは、言葉の本来の意味における「生涯教育(学習)」の視点の重要性と、その取り組みのためのしくみづくりをいかに行うかということを、改めて提起するものでもある。
 第二は、これまでの様々な問題状況を生み出してきた、あるいはその原因としての学歴社会ないしは知育中心主義(暗記学習)への反省としての、いわゆる「受験学力」から「生きて働く知恵」ヘの転換である。そのキーワードとして出てきたのが、まさに「生きる力」という表現に込められた「統合的な学力観」である。
 第三は、そこにおける「学力観」「評価の観点」の変更である。つまり、これまでの、さまざまな学力あるいは学習成果のレパートリー(要素)を用意し、そのそれぞれに対応させてその到達度を見る、言わば「静的・要素分解的学力観」から、現実の場面で総合的に生きて働く知恵、あるいはその中で自ら課題を発見し、それを解決する能力としての「動的・統合的学力観」ヘと、その観点を移行させる必要があるということである。
 第四は、知識、技能、意欲・関心・態度等が、いかにして、「生きて働く」しかも「統合的な」学力として形成されるのかということである。ここに登場してくるのが、それを生み出す「時間、空間、(人間)関係の広がり」と、そこにおける多様な人間の生き方、そしてまたそれらが織り成す人、モノ、価値、情報との「出会いの場」の重要性である。そこでの出会いは、言うなれば、「現実生活」におけるさまざまな場面での「学習交流」の場となり、そしてまたある意味では、それは、「必要性が実感される」ないしは「追い詰められた」、つまり、生きた学習場面での体験的な学習の場となるということである。
 第五は、「自己完結型教育」から「ネットワーク型教育」への転換である。教育・学習は、すべてのことを自前で、あるいは自分のクラス(授業)のみでやることは無理であるし、そもそも危険でもある。また、自らがやるより、他の教育・学習の場に任せた方がよいものはそちらの方に任せたり、自らの教育・学習の場に、そこでの教育・学習の成果を組み入れたりすることの方が、手間隙もさることながら、お互いの信頼関係を築く上でも重要なこととなる。
 第六は、「学校(内部)経営」から「地域教育経営」ヘの転換である。やはりこれからは、学校の内と外との関係を見直し、そこでの双方向性ないし循環性の関係を確立するというスタンスの中で、学校の大きな機能である「教育課程経営(ソフト面)」と「学校経営(ハード面)」の双方の面で、共にそうした取り組みの努力をしていく必要があるということである。そこから、一方で、社会教育との接近の道筋が見えてくるのであり、その両者の融合・一体化への取り組みが求められるのでもある。したがって、他方の社会教育のあり方も、当然その方向性に応えるべく、自らをシフト変換させていかなければならない。
 
 
 
  参考文献
・井上講四『教育の複合的復権−「教え育てること」を忌避した社会?!−』学文社、2001年
・井上講四『生涯学習体系構築のヴィジョン−見えているか?生涯学習行政の方向性−』学文社、1998年
・琉球大学教育学部地域教育経営(井上講四)研究室編集「新しい教育実践の創造と展開-完全学校週5日制時代の教育のあり方-」(平成16年度琉球大学地域貢献推進事業報告)、2005年3月
 
 
 
 
 



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