登録/更新年月日:2009(平成21)年8月23日 |
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ここでは人口千人あたりの刑法犯認知件数を犯罪率として分析した。 【都道府県レベルの分析結果】 一人あたりの社会教育費と犯罪率の関係をみると、47都道府県全体の場合、一人あたりの県民所得が「高」の都府県の場合、「中の高」の道府県の場合で、一人あたりの社会教育費が高い都道府県ほど犯罪率は低下する傾向がみられる。一人あたりの県民所得が「低」の県の場合も、どちらかといえば一人あたりの社会教育費が高い県の方が犯罪率は低い。 詳しくは、添付する資料の図11〜図15を参照のこと。 【市区レベルの分析結果】 上述の都道府県レベルではデータ・サイズが大きすぎるため、全国の市区レベルの一人あたりの社会教育費と犯罪率との関係についてみてみることにしよう。 添付する資料の図16をみてもわかるように、市区レベルの場合も、一人あたりの社会教育費が高くなるほど犯罪率は低下する傾向がみられる。 【参考:警察費との比較】 次に、社会教育費投入の犯罪発生に対する効果をより具体的にみるために、一人あたりの警察費と比較してみることにしよう。 添付する資料の図17は、47都道府県の場合の犯罪率別にみた一人あたりの警察費(県財政)と一人あたりの社会教育費(県・市町村)である。図のタイトルでは、刑法犯認知件数としているが、ここでは上述したように、人口千人あたりの刑法犯認知件数を犯罪率としているので、両者は同じものである。一人あたり警察費の場合は、経費をかけても必ずしも犯罪率が下がるわけではなく、一人あたりの社会教育費の効果の方がはるかに明瞭のようにみえる。 ただし、大都市圏では犯罪が多く、警察費がかかるのも当然であろう。そこで、東京都、大阪府、京都府を除く44道県についてみてみることにした。それが図18である。大都市圏を有する都府を除いた場合には、一人あたりの社会教育費と一人あたりの警察費とほぼ同様の効果がみられる。 もちろん、クロス集計の結果をもって効果といい切ることはできないが、傾向性の一面を表しているということはいえるであろう。 【考察】 一人あたりの社会教育費と犯罪率との関係には、一人あたりの県民所得が「中の低」の県を除き、負の相関がみられ、一人あたりの社会教育費が高い地域では犯罪率はわずかではあっても低下する傾向がみられる。 犯罪率は地域の安全・安心の一面を表す指標であり、社会教育費の投入が地域の安全・安心に何らかの影響を与えている可能性がある。もちろん、クロス集計による分析では見かけの相関を排除できず、社会教育費と犯罪率との間に因果関係があるとみなすことはできないが、傾向性として社会教育費の投入と地域の安全・安心との間に何らかの関係があるということはできるであろう。 【結論】 次に示す分析結果から、社会教育費への財政投入には、たとえわずかであってもボランティア活動率や投票率のアップや犯罪の抑制に関係があるように思われる。そのことが即、社会教育費への財政投入の効果であるとは必ずしもいえないが、生涯学習支援のアウトカムとして「市民性の育成」「安全・安心の確保」といった面があげられ、生涯学習推進の地域格差を問題にする際には、学習実態等の格差に留まらずそれらの面も視野に入れる必要があるように思われる。 br> 添付資料:一人あたりの社会教育費と犯罪率との関係(クロス集計) |
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参考文献 ・浅井経子「生涯学習推進の効果に関する分析−ボランティア活動率、投票率、犯罪率への社会教育費の効果−」日本生涯教育学会論集28、2007年7月。 ・浅井経子「地域指標との関連からみた生涯学習支援と生涯学習の構造−生涯学習推進の効果分析を通して−」日本生涯教育学会論集29、2008年9月。 ・浅井経子「生涯学習推進のための地域診断法の開発に向けて−社会教育費と地域指標の関係−」八洲学園大学紀要第2号、2006年3月。 |
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