生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年4月27日
 
 

佐野市の市民参画による生涯学習推進 (さのしのしみんさんかくによるしょうがいがくしゅうすいしん)

citizen participation for promotion of lifelong learning in Sano City
キーワード : 市民参画の実質化、市民参画における「私らしさ」、佐野市生涯学習推進基本構想、佐野市生涯学習推進協議会、ワークショップスタイルの諸会議への導入
西村美東士(にしむらみとし)
1.佐野市における市民参画の特徴
  
 
 
 
   佐野市の生涯学習推進の特徴は、市民の「私らしさ」追求を基点とした参画と、社会形成としてのまちづくりとが連続体として進められているところにある。そこでの市民参画には、生涯学習活動の「個人主導」としての側面と、まちづくり活動の「社会参画」としての側面を同時に見ることができる。
【参画の種類と連鎖】
 佐野市の生涯学習推進は、いわゆる「平成の大合併」をまたいで進められてきた(表1「年表:佐野市生涯学習推進の経緯」)。そこには、(1)市民委員としての推進計画策定への参画、(2)学習指導者としての推進事業への参画、(3)学習者としての生涯学習活動への参画の3種類の市民参画を見出すことができる。これらの参画は、連鎖しながら、「生涯学習のまち」を形成してきた。
【「私らしさ このまちに 咲かせます」答申における個人主導と社会参画の視点】
 平成18(2006)年10月、佐野市生涯学習推進協議会は、佐野市生涯学習推進基本構想策定に向け、標題の中間答申を佐野市長に提出した(表2「佐野市生涯学習推進協議会中間答申の構成」)。
 答申は、「まちづくりへの参画(2)田中正造などの郷土の偉人の整理と提示」において、「生涯学習活動は、個人の必要のために行われ、その結果、個人が充実する」と生涯学習の個人主導の側面を強調した上で、「そのことによって、私らしさも、より確かなものに」なり、これをもとに「わがまち、わが国、わが地球」のために求められる社会参画を推進するよう提唱している。このように「個人が必要とするもの」と「社会が必要とするもの」を結び付ける重要な要素として「郷土愛」や「社会正義」を掲げた中間答申の特徴は、平成19(2007)年3月の最終答申を経て、平成20(2008)年3月の「佐野市生涯学習推進基本構想・基本計画」(表3「佐野市生涯学習推進基本構想・基本計画の構成」)に継承された。
【「楽習と参画のまち佐野」都市宣言における個人主導と社会参画の視点】
 平成19(2007)年12月、佐野市は、同協議会の起草をもとに、市議会の議決を経て、生涯学習都市宣言(表4「宣言文の構成」)を行った。
 宣言文冒頭の「私たち佐野市民は、ひとりひとりが楽習をとおして個人として深まり、」は、個人主導の「楽しい」学習による個の深まりを表わしている。
 続く「その個性を生かし、協働して佐野のまちづくりに参画します。」は、学習によって深まった個によるまちづくり参画の意義を訴えている。同協議会は、その参画の範疇について、「挨拶から始まる社会形成」という視点から、幅広く、すべての市民が現に行っていることとしてとらえている。これを、「個人主導」としての生涯学習活動と、「社会参画」としてのまちづくり活動との連結ととらえることができる。
 次の「たがいに自分らしさを認めあい、支えあい、はぐくみあう仲間をつくります。まちづくりへの参画のなかで、自分らしさを佐野のまちに咲かせます。」は、個の深まりが、支持的風土(図1「支持的風土と防衛的風土」、Gibb,C.A.、1969)の集団において、他者と関わることによってより深まるとともに、「私らしさ」へのニーズを充足させることを表わしている。
 同宣言は、市民委員のワークショップスタイル上の観点に基づき、「ふるさと」「環境・安全」「子育て」の3領域について、楽習と参画による生涯学習のまちづくり像を示したものといえる。 添付資料:佐野市における市民参画の特徴
 
 
 
  参考文献
・西村美東士「まちづくり推進における青少年と親の社会化支援方策−佐野市生涯学習推進基本構想作成過程からの検討」、聖徳大学生涯学習研究所紀要『生涯学習研究』5号、pp.17-37、2007年3月
 
 
 
 
  



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