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登録/更新年月日:2012(平成24)年11月1日
 
 

社会教育主事の養成と登用 (しゃかいきょういくしゅじのようせいととうよう)

キーワード : 社会教育主事、社会教育主事講習
佐久間章(さくまあきら)
1.社会教育主事の養成
  
 
 
 
   社会教育主事の任用資格については,社会教育法第9条の4で,二つの要件が定められている。一つは,社会教育主事の講習を修了することを要件とするもの。ただし,一定期間の社会教育か学校教育の経験を有することを必要としている。もう一つは,大学において文科省令で定める社会教育に関する科目の単位を修得し,1年以上社会教育主事補の職にあったものとされている。
 国立教育政策研究所社会教育実践研究センターが実施した調査(以下,国社研調査)によると,現職社会教育主事の資格取得の実態は,8割が社会教育主事講習(以下,主事講習)によって得ており,都道府県の社会教育主事に限ってみると,主事講習による取得は9割を占める。このように,主事講習が資格取得の中心であることは,職務を遂行するに足るような講習内容を備えていることが重要なことである。しかし,主事講習の必要単位数の変遷をみると,昭和26(1951)年の主事講習等規程制定時に15単位であったものが,その後4度の改正によって現在の9単位となっており,同規程改正のたびに減少している。一方,同じ社会教育の専門職員である図書館司書・博物館学芸員は,資格取得に必要な単位数を増やしており,社会教育主事とは逆の傾向にある。現在の主事講習が,社会教育主事としての職務遂行に必要な知識・技術を習得できる内容になっているか否かの検証が必要である。
 また,主事講習の単位修得の認定は,主事講習等規程第7条によって,「試験,論文,報告書その他による成績審査に合格した受講者に対して行う。」とされている。しかし,この成績審査に明確な基準はなく,現状は学習(受講)時間が審査基準の中心となっているきらいがある。主事講習は,受講さえすれば容易に修了できるという認識が一部にあることも事実である。
 国社研調査で資格取得後,発令までの年数をみると,市区町村社会教育主事が,取得後1年以内に発令を受けたものが5割を超えるのに対し,都道府県社会教育主事は,4割である。このことは、市区町村社会教育主事に発令を前提とした資格取得が多いのに対し,教員からの登用が中心である都道府県社会教育主事は,有資格教員の中から発令されるケースが少なくないことを指摘している。この結果から危惧されることは,主事講習終了後一定期間を経て発令を受ける社会教育主事の存在である。主事講習後,1〜2年後の発令であれば疑義もないが,仮に10年を経て発令されるとするならば,職務遂行に必要な知識・技術を維持しているか否かということについて疑問である。教員免許は,平成19(2007)年の改正教育職員免許法の成立により,教員として必要な資質能力の保持と定期的に最新の知識技能を身に付けることを目的として平成21(2009)年から更新制が導入されている。更新制度のない社会教育主事任用資格が,今日の変化の激しい社会状況下において職務を遂行するための資格として機能するか否か、講習内容をはじめ単位修得の認定,資格更新および資格の等級階層設定などを含めた制度全体の検討が必要である。
 
 
 
  参考文献
・「社会教育主事の養成と活用・キャリアの実態に関する調査報告書」,国立教育政策研究所社会教育実践研究センター,平成23年3月。
 
 
 
 
  



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