生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2012(平成24)年11月1日
 
 

社会教育主事の養成と登用 (しゃかいきょういくしゅじのようせいととうよう)

キーワード : 社会教育主事、社会教育主事講習
佐久間章(さくまあきら)
2.社会教育主事の登用
  
 
 
 
   教員からの登用が大勢を占める都道府県社会教育主事は,国社研調査においても,発令直前の勤務先が学校である者が,全体の7〜8割となっている。都道府県社会教育主事が,教員から如何なる方法で登用されているかについては,全国の実態を調査した資料は確認できないが,およそ以下の方法に集約されると考えられる。
 一つは,一定期間教職にある者の中から,人事選考の中で選抜し公費で主事講習を受講させ,登用する方法である。この方法による登用が最も多いのではないかと思われるが,選考にあたっての資格要件や選抜方法等が明確に示されているか否かについての状況は,確認できていない。
もう一つは,具体的に要綱を定め選考を行っているケースである。北海道は,「専門的教育職員採用候補者選考実施要綱」を定め,社会教育主事の選考を行っている。社会教育主事資格と8年以上の教員経験を有することを資格要件として,筆記(論文形式)と面接(個別面接)により選考し,採用候補者として名簿登録されたものから発令している。選考にあたって必要となる社会教育主事資格を得るための主事講習の受講費用は,すべて自己負担である。
 前者の場合,学校教育と社会教育を包含した戦略的に人事を行う上で有効に機能することが期待できる。国社研の調査において,都道府県が費用を負担して養成した社会教委育主事有資格者の配属状況をみると,発令しないまま学校現場に配属している割合が一定程度ある。これは,社会教育主事としての発令だけではなく,有資格教員として,学校と地域を結ぶ役割への期待とみることができる。また,未発令者を活用する工夫や仕組がすでにある都道府県は全体の約2割になっている。このように人事選考の中での選抜は,社会教育のみならず学校教育をも含めた総合的な人的配置を行うことができるというメリットがある。しかし一方では,選考のプロセスが不透明になりがちであり,本人の意に反して発令されるといったミスマッチによるデメリットも否めない。
 後者の北海道方式は,選考方法を明確に示すことによって,社会教育主事を希望する意欲の高い教員を広く集めることができる。しかしその反面,資格取得(社会教育主事講習)にかかる費用を自己負担しなければならないことから希望者が思うように集まらないという事態も考えられる。しかし、社会教育主事を志す者にとっては,登用プロセスが明確となっていることによるメリットは大きい。いずれにしても,高い意欲と専門性を有する人材の確保が重要であることに疑いの余地はない。これまであまり明らかにされることのなかった教員からの登用の仕組について,全国の実態把握と検証が必要である。
 
 
 
  参考文献
・「社会教育主事の養成と活用・キャリアの実態に関する調査報告書」,国立教育政策研究所社会教育実践研究センター,平成23年3月。
 
 
 
 
  



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