登録/更新年月日:2008(平成20)年12月30日 |
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【案内ボランティア・コーディネーターよる学習支援】 学習支援者にとって、授業中の反応の弱さや雰囲気の冷たさは、学習支援を行う上での大きな障害である。平成20年に行った紙芝居の制作では、生徒を5人前後の小グループに分け、それぞれに案内ボランティアを配置し、生徒が「調べる」「話し合う」「表現する」学習が行えるように工夫した。すなわち案内ボランティアからの歴史上の話題提供に対し10分程度のふりかえりの時間を設け、「初めて知ったこと」「驚いたこと」など付箋にまとめ発表し、その内容をもとにさらに話題提供をしていただく、という流れをつくった。この方式により会話を楽しみながら授業が進められ、学習支援者と生徒間の距離を縮めることができた。また案内ボランティアにとっても「教える」というスキルの習得を意識せずに生徒と日常会話をする形で学習支援を行うことができ、さらに中学生の視点や個性、発想などを身近に感じることができた。 コーディネーターは、生徒の反応を引き出し、生徒の合意形成・意志決定を誘導し、主体性を育む役割を担っている。コーディネーターは前半の授業で、案内ボランティアの説明を聞くだけでなく生徒の態度や反応まで細かく観察していた。そして授業後半の教材創作の際には、気さくにお話をしながらその説明の内容を引用して生徒に振り返らせたり、いくつかの写真から最もふさわしい写真を検討してもらうなど、様々な場面で臨機応変に生徒の意志決定を促す工夫を取り、生徒と積極的に関わり、教材の原案完成に大きく貢献した。 実際の授業中、生徒とのコミュニケーションや合意形成・意志決定など、それぞれの学習支援者の負担はあったと思われる。しかし事後のアンケートによれば、立場の異なる学習支援者がそれぞれ自分の責務を理解し、互いに連携し教材を開発することの重要性を理解していただけた。また、教材開発に創意工夫をもって主体的に参画し、充実感を得ることができたと思われ、さらに学習支援者のその熱意は生徒も十分に感じ取っていた。すなわち、学習支援における異なる世代の住民の連携は、生徒と学習支援者の主体性を育み創意工夫を促すだけでなく、相互の強い信頼関係を構築することにつながった。 【手段としての学社融合の成果と今後の課題】 博物館・中学校・地域住民が地域課題を共有し学習活動を創出する今回の学社融合の実践は、中学生や地域住民にとって、以下の3点で有意義であり、地域課題の解決への一つの道筋がつけられただけでなく、地域住民・中学校・博物館相互の信頼関係が構築できたと考えられる。 (1)地域の文化資源を理解できる (2)連携・協働の「力」を理解し充実感を得ることができる (3)主体的活動や創意工夫をもたらす また、開発した教材は各家庭のほか小学校の授業や学校週休二日制事業等で活用されているが、今後は村内の様々な場面で多面的に活用していくことが必要である。特に「大潟村歴史紙芝居」は、紙芝居としての上演のみならず、そのストーリーを利用して人形劇や対話劇、スライドショー上映等、演出を工夫することができる。このことにより紙芝居の魅力は大きく増し、さらにかるたやすごろくよりも多くの場面で利活用ができると考えられる。今後は、多くの村民がふるさと大潟村の歴史に親しみ、理解する機会を設け、その支援を行っていきたい。 br> |
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参考文献 ・薄井伯征「学社融合による地域の歴史を後世に伝える教育教材の開発と生涯学習支援上の課題−『大潟村歴史かるた』づくりを通して−」秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要、第29号、2007年 ・薄井伯征「秋田県大潟村における学社融合の実践に関する一考察」日本生涯教育学会論集・29、2008年 |
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