生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年12月30日
 
 

秋田県大潟村の学社融合 (あきたけんおおがたむらのがくしゃゆうごう)

fusion of school and social education in Ogata village, Akita prefecture
キーワード : 学社融合、博物館、教育教材、大潟村
薄井伯征(うすいのりゆき)
2.学社融合による教材開発
 
 
 
 
  【開発した教材】
 開発教材は、(1)誰もがルールを覚えることなく、楽しみながら村の歴史に親しむことができること、(2)博物館収蔵の写真資料を豊富に使うこと、として検討し、以下の教材とした。
・平成18(2006)年度:「大潟村歴史かるた」
・平成19(2007)年度:「大潟村歴史すごろく」
・平成20(2008)年度:「大潟村歴史紙芝居」
【教材開発の過程】
 教材開発の中心は大潟中学校3年生の選択社会の授業である。期間は毎年7月から10月であり、授業時間数は年度により異なるが11〜16時間、生徒数は25名から27名である。例年6月に授業計画や進め方、学校と学習支援者(地域住民・博物館)の役割分担について打ち合わせが行われた。3年間とも基本的な授業の流れは、以下の(1)〜(5)である。うち、(5)の教材化の過程は干拓博物館が行った。
(1)オリエンテーション(授業の目的や流れの説明)
(2)中学生の歴史学習(案内ボランティアが収蔵資料を活用して学習支援)
(3)教材の骨格の創作(住民が学習支援)
(4)創作した成果(原案)の発表
(5)原案の整理・教材化と村内全世帯配布
【学芸員のマネージメント】
 これら一連の過程において、企画立案、マネージメント、原案の教材化は干拓博物館学芸員(筆者)が行っている。ここでマネージメントは、単なる学習目標の設定や時間配分の明確化だけではない。具体的に準備・調整した部分は以下の(1)〜(3)である。
(1)村の歴史を生徒にどのように興味をもってもらうか
(2)生徒が学んだ歴史事項を教材創作のどの場面で活かすか
(3)(1)や(2)の過程で学習支援者の特色を生かしてどのような支援ができるのか
 (1)においては、案内ボランティアから生徒の祖父母の話題を提供していただいたり、博物館収蔵の八郎潟干拓の記録映画を一緒に鑑賞したりし、初めて知る村の歴史への興味を喚起させ、歴史を学ぶことへの導入とした。(2)においては、生徒が歴史を学び、感じた部分を教材の中にできるだけ具現化したいと考えた。かるたづくりでは「絵札の写真の選択」「短歌形式での読み札作成」、すごろくづくりでは「マス目の写真の選択」「すごろくのルールづくり」、紙芝居づくりでは「シナリオの創作」「背景の写真の選択」の作業が、生徒が教材開発で担った部分である。(3)においては生徒をグループに分け、グループごとに「八郎潟干拓工事」等のテーマを設け、授業の前半は案内ボランティアが対話形式で授業を進める形とした。また「すごろく」「紙芝居」の骨格の創作においては、生徒間の合意形成や意思決定を促すためにコーディネーター(入植者二世、生徒の父母の年代に相当する女性)2名を配置し、生徒の中に入り、生徒が学んだ成果を具体的な形にする支援をしていただいた。
【原案発表と教材化】
 原案完成後、学習支援者を全員招待し、原案の発表を行った。完成した原案には歴史の解説等の情報を付加した。そして、親しむことができるデザインで教材を印刷発注した。完成した教材はお正月前に中学生が手分けして村内全世帯に配布した。
 
 
 
  参考文献
・薄井伯征「学社融合による地域の歴史を後世に伝える教育教材の開発と生涯学習支援上の課題−『大潟村歴史かるた』づくりを通して−」秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要、第29号、2007年
・薄井伯征「秋田県大潟村における学社融合の実践に関する一考察」日本生涯教育学会論集・29、2008年
 
 
 
 
 



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