生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

生涯学習eソサエティ (しょうがいがくしゅういーそさえてぃ)

lifelong learning e society
キーワード : ネット・コミュニティ、ユビキタス社会、リアルな学習、バーチャルな学習、ラーナーデザイン
伊藤康志(いとうやすし)
1.生涯学習eソサエティ
  
 
 
 
  【定義】
 情報コミュニケーション技術の活用という観点から捉えた生涯学習社会のこと。
【説明】
1)「情報コミュニケーション技術」とはICT(Information & Communication Technology)の意。
 総務省「ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会」最終報告書(平成16(2004)年)では、ユビキタス(遍在)社会を「あらゆる人やモノが『結』びつくことによって、ICTが日常生活の隅々にまで普及し、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークにつながる社会」、「あらゆる局面でコミュニケーションがより重要な役割を担う時代」と指摘している。
2)中央教育審議会生涯学習分科会の『審議経過の報告』(平成16(2004)年)では、「生涯学習を振興していく上で今後重視すべき観点」としてITの活用を挙げ、「生涯学習へのアクセス」「学習資源の創造・蓄積・共有・循環」「ネット・コミュニティ」の三つを指摘した(資料により「IT」とされる場合は原典のままとするが、「ICT」と同義とする)。
 ここで留意しなければならないのは、例えば従来の公民館講座の様な対面学習をICTによる遠隔学習が代替する、あるいは学習効果を高めるためにICTを活用するといった論点ではなく、むしろ両者がごく普通に融合する時代が来るという認識である。上記懇談会最終報告書では、u-Japan政策を電子化という段階を卒業し、「ICTが草の根のように生活の隅々にまで融け込んで空気のように当たり前」になる社会を実現するものとしている。
3)山本恒夫はこれからの学習を「リアルな学習」(公民館の講座等の伝統的な学習、地域レベルの学習性のあるコミュニティ活動、)、「バーチャルな学習」(eラーニング、インターネットレベルの学習性のあるコミュニティ活動)に分類しているが、これらの学習が相互に融け込んで展開される社会が「生涯学習eソサエティ」だろう。
 また山本は、知識基盤社会の中、職業能力の向上に目的化されたeラーニングが一層伸長・普及すること、このeラーニングの送り手の中心として「専門的な知」を持つ大学・専門学校、企業などが参入、これまでの教育委員会中心による生涯学習支援は「地域レベルのコミュニティ活動」に収斂されるだろうと予測している。
 インターネットレベルのコミュニティ活動でも地域の学習者自身が、富山インターネット市民塾のように、自分たちで学び合いのネット・コミュニティを形成するようになり、そこでは地域を基盤に「リアルな学習」と「バーチャルな学習」が融合している。
 「生涯学習eソサエティ」の問題は、ICTが活用される場面のみならず「リアルな学習」も取り込んだ、言わばこれからの生涯学習(社会)全体の捉え直しであり、これまでの(行政による)生涯学習支援の枠組みの転換を迫っている。
 
 
 
  参考文献
・井内慶次郎監修 山本恒夫・浅井経子・伊藤康志編『生涯学習[eソサエティ]ハンドブック』文憲堂、平成16(2004)年                        
・山本恒夫「生涯学習及び生涯学習支援の構造転換」『日本生涯教育学会年報』第26号、平成17(2005)年                         
 
 
 
 
  



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