生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年12月16日
 
 

高校生のボランティア学習−その2 (こうこうせいのぼらんてぃあがくしゅう−その2)

キーワード : ライフスタイル、学習環境、振り返り学習、学習資源
林幸克(はやしゆきよし)
3.高校生のボランティア学習の振興方策
  
 
 
 
  1)ボランティア学習の学習方法
 ボランティア学習の展開に関して、教育活動として行う以上は、学習成果の定着を図ることが求められる。その定着度を高めるために、振り返り学習の在り方を見直す必要がある。学習を展開する際、事前学習や学習実践については、十分な時間をかけて準備をし、慎重で配慮の行き届いた指導がなされやすいが、実践することで学習目的が達成されたかのようになり、その後の学習がおざなりになってしまいがちである。その振り返り学習こそが、学びを深める成否を握っている。ただ単に調べた、体験した、話を聞いただけでは、一時的な刺激にはなり得るが、学習に対する更なる持続性や発展性はあまり期待できない。学習したことを振り返り、仲間や教師などと共有することによって、学びを深め、新たな発見をし、更なる学習へとステップアップさせることにつながる。
 一般校と先進校の比較から、学習環境の整備・拡充を図ることの重要性がわかる。高校入学前後のボランティア学習に関しては、一般校も先進校も入学後のボランティア学習が低調になっていたが、ボランティア先進校の減少幅は小さかった。一般校では学校行事として養護学校との交流会や小学校と高校の交流事業に取り組んだり、総合学習の一環として講話を聞くなどの活動はあるものの、いずれも一回だけで終了する単発のボランティア学習で、そこに継続的な活動の可能性を見出すことは難しい。他方、先進校は、部活動や委員会活動とボランティア学習がリンクしており、日常的にボランティア学習に取り組むことのできる環境が整備されている。身近にそうした環境があることで、継続性のあるボランティア学習が可能となっている。
2)学校と地域社会における連携の方向性
 地域社会に学習成果を示す機会があり、その機会に披露・発表するだけのものを体得していれば、ボランティア学習は活性化するはずである。地域社会には、お祭りなどのイベントや季節・年中行事、あるいは様々な施設が多数存在し、学習成果の披露・発表の場は、その気になって探せば意外とたくさんある。学校や地域社会だけの枠にとらわれていては、活動に広がりと深みをもたらすことは難しく、限界が生じやすい。そのため、両者が連携・融合しながらボランティア学習をバックアップすることが不可欠になる。
 学校と地域社会は、それぞれに様々な資源を有している。その資源を相互に有効活用する必要がある。その中でも特に共有・交換することが望まれるのは、人と情報に係るノウハウである。同じ高校生を対象にするボランティア学習であっても、その展開・指導方法は学校教育と社会教育では異なる場合が多い。それに伴い、高校生の本音やニーズの引き出し方、それに対応する学習内容・場面の設定・開拓、外部人材のコーディネートの方法なども異なってくる。学校は学校でノウハウや人脈などの蓄積があり、地域社会は地域社会で同様の蓄積がある。そうしたノウハウを相互に活用・共有しながら、更なる学習への動機づけとなるような刺激を高校生に与えることが肝要である。諸資源の交流が活発になることによって、学校と地域社会、それぞれの組織のキーパーソンがつながりやすくなり、また組織としてのつながりも生まれ、両者の資源の相互補完・還流の可能性が拓ける。
 
 
 
  参考文献
・岡崎伸二『海を越えたボランティア活動−ラオスに学校を贈った生徒会』学事出版、1998
・関嘉寛『ボランティアからひろがる公共空間』梓出版社、2008
 
 
 
 
  



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