生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年8月23日
 
 

生涯学習推進の効果・その1 (しょうがいがくしゅうすいしんのこうか・そのいち)

キーワード : 社会教育費、アウトカム、ボランティア活動率、犯罪率、効果分析
浅井経子(あさいきょうこ)
1.分析の目的と方法
  
 
 
 
  【分析の目的】
 社会教育費への財政投入が地域社会に与える影響を明らかにすることを通して、生涯学習推進の効果の一端を探る。その目的は、次の課題に対する手がかりを得ることにある。
1)生涯学習支援に公的資金を投入しても、成果が見えにくい、生きがい追求等の私的な成果はあっても公共的な成果がみられない、といった批判がある。財政難の今日、その批判は高まっており、費用対効果等の測定が求められている。
2)NPMの観点から、行政機関、施設等でも政策評価や自己点検・評価が行われており、その際の課題の一つにアウトカム評価がある。これまで教育・学習の成果の数値化は難しいとして成果の測定を避けてきたこともあり、どのような領域にアウトカムがあらわれるかがわかっていない状態にある。
3)地方分権、競争的環境のもとでの予算配分等が進む中にあって、さまざまな格差が生じ始めている。地域格差を含めた格差の是正は今後の行政課題の一つになろうが、生涯学習領域ではどの程度までの格差が許容され、どの程度の格差が生じたときに手を打つべきか等については何ら検討されていない。その検討は、生涯学習推進が地域社会にどのような影響を与えているかを明らかにすることから始まるように思われる。
【分析の方法】
 社会教育費の地域社会に及ぼす影響は地域指標の変化で捉えることができるであろう。ここでは、社会教育費への財政投入が市民性の育成、安全・安心等の面で地域社会に影響を与えているという仮説のもとに、一人あたりの社会教育費と相関係数が有意な指標を取り上げ(添付する資料の表2を参照)、クロス集計を使って分析することにした。重回帰分析を使った成果については、参考文献を参照してほしい。
 分析にあたっては、都道府県レベルの地域指標との関係を中心に取り上げるが、都道府県レベルではデータ・サイズが大きすぎるため、一部は市区町村のデータをも取り上げた。
 もちろん、社会教育費への財政投入が地域社会を大きく変動させるのかといえば決してそうではなく、わずかな影響を捉える試みにすぎない。
【分析の観点】
■地域類型
 地域類型としては、次のものを取り上げた。
@.都道府県レベル
 47都道府県全体、および一人あたりの県民所得別が「高い都府県」、「中の高の道府県」、「中の低の県」、「低い県」。(添付する資料の表1を参照。)
A.市区レベル
 全国の市と東京都23区。
■地域指標とデータについて
 地域指標と分析の対象としたデータは次の通りである。(詳しくは、添付する資料の表3、表4を参照のこと)
ア.都道府県レベルの分析
 地域指標としてボランティア活動率、投票率、犯罪率を取り上げ、データは平成13年度に統一した。犯罪率は千人あたりの刑法犯認知件数とした(以下、犯罪率という)。
イ.市区レベルの分析
 取り上げた地域指標は犯罪率で、市町村合併が本格化する前の平成15年度のデータを分析の対象とした。ただし、データが欠損している市(東京都の市)も多く、また外れ値(東京都千代田区)を除いたため、平成15年度の市と東京都23区の総数は712であったが、今回の観測数は695である。 添付資料:分析に用いたデータ等
 
 
 
  参考文献
・浅井経子「生涯学習推進の効果に関する分析−ボランティア活動率、投票率、犯罪率への社会教育費の効果−」日本生涯教育学会論集28、2007年7月。
・浅井経子「地域指標との関連からみた生涯学習支援と生涯学習の構造−生涯学習推進の効果分析を通して−」日本生涯教育学会論集29、2008年9月。
・浅井経子「生涯学習推進のための地域診断法の開発に向けて−社会教育費と地域指標の関係−」八洲学園大学紀要第2号、2006年3月。
 
 
 
 
  



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