生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年12月30日
 
 

公立図書館におけるボランティア活動 (こうりつとしょかんにおけるぼらんてぃあかつどう)

volunteer activities in public library
キーワード : ボランティア活動、公立図書館、社会教育施設、ボランティア活動への支援、ボランティア活動への評価
荻野亮吾(おぎのりょうご)
1.公立図書館におけるボランティア受け入れの背景
  
 
 
 
   都道府県立・市町村立の公立図書館でのボランティアの受け入れは、すでに1970年代から始まっていたが、注目が高まったのは1980年代後半のことである。転機となったのは、昭和61(1986)年の社会教育審議会社会教育施設分科会の「社会教育施設におけるボランティア活動の促進について」という報告である。この中で、生涯学習とボランティア活動の関連が指摘されるとともに、ボランティアの受け入れによって社会教育施設の運営面や事業面で活性化がなされることが指摘された。加えて、この報告では各社会教育施設での具体的なボランティア活動の形態が挙げられており、図書館については、視覚障害者のための点字図書や録音テープなどの作成、子どものためのストーリー・テリング、紙芝居、読書会活動などの集会行事における指導・助言・協力、移動図書館の地域配本所における援助活動、書庫の図書整理及び破損図書の修理、レファレンス・情報提供における司書への協力、民話などの郷土資料の収集活動への協力といった活動が挙げられた。またボランティア活動を活性化するための課題として、施設の受け入れ体制の整備や費用負担、事故防止などの課題が示された。
 さらにボランティア活動と生涯学習の関連については、平成4(1992)年の生涯学習審議会の答申「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」で整理がなされ、
1)「ボランティア活動そのものが自己開発、自己実現につながる生涯学習となるという視点」
2)「ボランティア活動を行うために必要な知識・技術を習得するための学習として生涯学習があり、学習の成果を生かし、深める実践としてボランティア活動があるという視点」
3)「人々の生涯学習を支援するボランティア活動によって、生涯学習の振興が一層図られるという視点」
の3つが示された。このように、公立図書館におけるボランティアの受け入れは、生涯学習の支援という広い文脈にも位置付けられ、推進されることとなった。
 平成13(2001)年に告示された「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の中では、「国際化、情報化等社会の変化へ対応し、児童・青少年、高齢者、障害者等多様な利用者に対する新たな図書館サービスを展開していくため、必要な知識・技能等を有する者のボランティアとしての参加を一層促進するよう努めるものとする。そのため、希望者に活動の場等に関する情報の提供やボランティアの養成のための研修の実施など諸条件の整備に努めるものとする。なお、その活動の内容については、ボランティアの自発性を尊重しつつ、あらかじめ明確に定めておくことが望ましい」とされた。公立図書館についての基準の中に、ボランティアの受け入れ体制の整備と、活動への支援の充実が明記されたことはボランティアの受け入れを後押しするものとなった。
 これらの動向を受けて、公立図書館でのボランティアの受け入れは大きく進展した。『社会教育調査』によれば、ボランティアの登録制度を有している施設の割合は、平成14(2002)年調査で52.9%、平成17(2005)年調査で60.7%であり、他の社会教育施設と比べて高い割合となっている。1990年代後半から2000年代にかけて受け入れを始めた施設も多く、この時期に公立図書館でのボランティアの受け入れが急速に進んだことがわかる。
 
 
 
  参考文献
・文部科学省生涯学習政策局調査企画課編『社会教育調査報告書』2002年・2005年
・社会教育計画研究会編『社会教育施設におけるボランティア活動の現状−調査報告2006−』2008年

 
 
 
 
  



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