生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年3月14日
 
 

生活様式枠組と生涯学習研究 (せいかつようしきわくぐみとしょうがいがくしゅうけんきゅう)

framework for the way of life and study on lifelong learning
キーワード : 生活様式、行動様式、生活領域、技術操作法、文化変容
白木賢信(しらきたかのぶ)
1.生活様式の捉え方と生活様式枠組
  
 
 
 
  【定義】
 生活様式とは、生活のすべての領域にかかわる技術またはその組合せで、生活様式枠組とは、そのような生活様式に関する構成要素の一定の序列ないしは仕組を示すものである。
【説明】
 生活様式は領域によって広狭さまざまな捉え方がある。例えば住居学では、類型的な生活過程の繰り返しの型と捉えたり、一定の生活手段を活用または消費して一定の状況のもとで生活にかかわる要求・目標等を実現していく営みと捉えている。経済学では、家族あるいは人間と生活手段の結合様式と捉え、その基本的要素として、家族、生活手段、消費サービス労働、生活時間、生活意識を挙げている。社会学では特定の社会または集団の成員が共有する生活の営み方として捉え、文化人類学では文化と極めて類似した捉え方をしている。このような広義の捉え方に対し、地理学、特にフランス地理学派では、知的・社会的な生活環境にかかわる技術またはその組合せという狭義の捉え方をしている。
 山本恒夫が提出した生活様式の分析枠組は狭義の生活様式によるもので、そこでは、生活様式は生活のすべての領域にかかわる技術またはその組合せで、それは生活におけるさまざまな領域と結び付いて表出されるとしている。
 技術については次の小項目で詳しく述べることにして、生活領域のほうの説明を先にすると、次の(1)〜(5)の領域が考えられる。人間の生活におけるあらゆる活動は、これらの領域のいずれかまたはその組合せとして捉えることができるであろう。
(1) 生物的機能維持の領域
 これは生物的 biologic な維持において必要な領域で、衣食住に関する日常的な物質的満足、睡眠、休養、排泄、呼吸など生物的な動因の解決、健康の維持などにかかわる生活様式がここに分類される。
(2) 財・サービスの生産・分配の領域
 これは広い意味で経済的 economic と呼ばれるような領域で、生存に最低限必要な衣食住の上にある物質的財やサービスに結びつく領域で、仕事、家事・家政をはじめとする経済的な生活様式がここに分類される。
(3) 成員の再生産と社会化の領域
 ここには、結婚、移住、出産、養子縁組などの成員の補充と、子どもの養育・教育などの子どもに対する価値観・知識・技術の提供にかかわる生活様式が分類される。
(4) 秩序の維持の領域
 これは秩序を維持するための統制・調整に関する領域で、交際、近隣生活、家庭生活での秩序維持、広義の政治的活動、社会的活動関係の生活様式がここに分類される。
(5) 生活への意味付け・動機付けの領域
 これは(1)〜(4)の意味づけ・動機づけとして位置づけられる領域で、教養、趣味、娯楽関係の生活様式や、祭なども含む儀式関係の生活様式がここに分類される。
 
 
 
  参考文献
・Bennett,John W. & Tumin,Melvin M.,Social Life:Structure and Function,New York,Alfred A.Knopf,1949,pp.45-59
・谷岡武雄「フランス学派における生活様式の概念」『立命館文学』122、pp.1-24、昭和30年
・山本恒夫「社会教育活動分析の枠組」『国立社会教育研修所紀要』第1集、pp.33-50、昭和42年
・辻功・山本恒夫編著『現代社会教育概論』第一法規、昭和52年
・吉野正治『生活様式の理論』光生館、昭和55年、他
 
 
 
 
  



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