登録/更新年月日:2006(平成18)年5月31日 |
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1)試験や査定に基づく評価制度 大学の多様性とともにその開放性を標榜するアメリカでは、およそ1960年代から単位取得あるいは学位取得のためのさまざまな革新的な方法が開発・実践され、70年代以降の非伝統的高等教育の発展をもたらした。それは大学と生涯学習とのネットワーク化ともいえるものであった。 まず、早くから全国的規模の公認された試験機関が存在し、その発達がハイスク−ルや大学レベルにおける「試験による単位」(Credit-by-Examination)制度を生み出してきた。試験による単位取得とは、伝統的なクラス出席授業を受けることなく、全国的規模の公認された試験実施機関が提供する各種の能力試験によって単位を取得し、学位や他の資格・免状等の取得に結びつけようとするものである。中でも大学入学試験委員会(The College Board)が運営する「大学レベル試験プログラム」(College Level Examination Program)は、全米で2,900余りの大学で利用され、認知度はきわめて高い。対象は、成人学生に限らず、受験上の年齢制限も設けられていない。 次に、軍・企業等における教育プログラムの学習成果を査定し、単位認定する試みも大々的に行われている。アメリカ教育協議会(ACE)が行っている「非大学後援教育プログラム」(Program on Noncollegiate Sponsored Instruction)がそれである。アメリカ国軍が隊員として実施する各種訓練及び専門技術者養成プログラムが一定の要件を満たす場合、それは高等教育における科目に相当すると判断され単位認定されることになっている。全米のほとんどの大学・短期大学でこうした訓練プログラム修了者に対して単位認定を行っており、現在では、軍関係以外の企業等の教育コースについても同様な試みが行われている。 2)経験学習に対する単位認定 他方では、経験で獲得した知識や学力を評価して単位認定する方法も開発・実践されてきた。コミュニティカレッジでは、職業的専門技能訓練系の科目については、成人学生の職務経験を考慮して科目ごとに履修免除試験を実施する場合が多い。基本的な考え方は、学習者の学習上の無駄な重複をなくし、学位の早期取得を支援することである。 特定の科目に限らずすべての開設科目について履修減免措置による単位認定をしようとするものが、ポートフォリオと呼ばれる方式である。ポートフォリオ(Portfolio)とは、以前の経験あるいは体験学習の証拠として学習者から提出される情報、書類一覧のことである。この評価は、学習者が自らの知識・技能を記したものをまとめてポートフォリオとして提出することから始まる。このポートフォリオは、いってみれば個人のキャリア・パスポートで、そこには個人の基礎データ(学歴、職歴、社会的活動、受賞、地域サービス活動等)とあらゆる知識・能力を示すファイルから成り、これに学業成績証明書や卒業あるいは資格証明書等が付加される。教員は、その内容が真に学問的なものであるか、大学レベルの学習の成果であるかを審査する。口頭での試験はなく、書かれたものに基づく評価である。それは、学生の学習に対する直接的評価で、個人を対象とした柔軟な評価方法として特徴づけられる。 br> |
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参考文献 清水一彦「アメリカにおける非伝統的高等教育の発展−単位及び学位取得方法の革新−」日本生涯教育学会年報第11号、1990年 |
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