生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年5月31日
 
 

アメリカの大学と単位認定制度 (あめりかのだいがくとたんいにんていせいど)

university and accrediting credit system in the U.S.A
キーワード : 大学、単位制度、GPA、生涯学習成果の評価、ポートフォリオ
清水一彦(しみずかずひこ)
3.単位制度の概念の変容
  
 
 
 
   これまでみてきたように、アメリカでは、生涯学習の発展において高等教育機関が重要な役割を果たすとともに、早くから生涯学習の成果を評価するさまざまな方法が開発され、多元的な評価システムを形成してきた。その結果、従来の基本原則に重要な変更が加わったり、また新たな合意形成も生まれるようになった。
1)クレジットと非クレジットとの境界領域の変化
 まず第1に、今日なおクレジットと非クレジットの明確な区別は遵守されているが、その区別の境界領域が拡大・変化していることである。これまで、準学士号を含む学位取得の課程における学習はすべて大学の単位認定の対象とされ、それ以外の課程や他のいかなる学習成果も単位認定されなかった。つまり、アカデミックな学位課程はクレジット、それ以外は非クレジットという原則であった。しかし、生涯学習の発展とともに、クレジットの概念が拡大し、非学位の課程やコース学習でも一定の基準を満たせば、全く同等の価値を有するものであるという考え方に変わってきた。学位課程においても、試験に基づく単位認定や査定による単位推薦方式のほか、ポートフォリオや面接のように書類や口頭試験による単位認定など、新しい評価方法が考えられるようになり、学校教育と学校外教育との学習成果の評価においてその区別を解消する努力が続けられてきた。そこでは、ACTやETSあるいはACEといった全国的規模の公認された試験機関の存在とその発達によるところが大きい。
2)クレジットとユニットとの差異の明確化
 第2に、生涯学習の評価におけるクレジットとユニットの差異の明確化である。本来、単位とは、学習量の単位という意味ではユニットであり、修得単位という意味でクレジットを表すものである。別言すれば、ユニットは量的単位であり、クレジットは質的単位である。しかし、今日、高等教育機関においてさえ混乱がみられ、単位を表す用語としてクレジットもユニットも同じように使われたり、あるいはクレジット・ユニットといった混成語もしばしばみられる。こうした中で、アメリカではこれまで継続教育と生涯学習とはほとんど区別されることなく使われているが、およそ1970年代半ば頃から職業や個人のキャリア開発のための継続教育の重要性がいっそう高まり、非クレジット部門における客観的な評価基準の必要性が生まれてきた。それが、組織的な継続教育の経験に対して開発された「継続教育単位」(Continuing Education Unit)という新しい単位であった。それは、アカデミックな単位であるクレジットとしては分類されず、それとは明確に区別される用語として位置づけられた。名称からはユニットとしての意味合いが強いが、実際には、学習量とともにコースの修得を表しているので、学位課程で使われるユニットとはまた意味が異なる。
 このように、アメリカではアカデミック・スタンダードを明確にしながらも、とくに継続教育部門の発達からクレジットの概念や範囲が拡大し、継続教育の学習成果の評価については、学位や資格・免状に結びつくクレジットとキャリアアップに役立つ単位(CEU)が生まれ、広く実践されている。
 
 
 
  参考文献
清水一彦「生涯学習と大学システム問題−単位互換制度・編入学制度を中心に−」日本生涯教育学会年報第22号、2001年
 
 
 
 
  



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