登録/更新年月日:2008(平成20)年4月24日 |
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コミュニタリアニズムはおもに政治思想として発展してきた。そのため、生涯学習や教育に関する理論そのものについては単純であったり抽象的であったりする言及が多い。しかし、1990年代以降、ブレア政権下にあったイギリスを中心に、コミュニタリアニズムの教育論をいかに実践に結びつけるのかという議論が盛んになり、関連の文献が多数出版されるようになった。 その際、議論の焦点になっているのはいかにして「価値」と「シチズンシップ」が涵養されうるのかという問題である。公立学校は、アメリカにおいてもイギリスにおいても、基本的には価値中立的であることが望ましいとされている。日本の状況と比較するとキリスト教の影響が強いように見えるものの、特定の宗教を奨励したり排除したりすることを制限してきた。けれどもイギリスのコミュニタリアンのひとり、ヘンリー・タムは、何が社会にとって共通の問題なのかといった「価値」に関わる事柄を通して社会的アイデンティティを培い、自らの地域社会において責任をもち他者を思いやることなしに、民主主義的なコミュニティは成立しないと主張する(参考文献の(1)より)。 アメリカの政治思想の研究者であるベンジャミン・バーバーも、教育との関連で「コミュニティ」での学習を重視する。バーバーの場合、この学習が学校には限定されず、ローカル・コミュニティであればあるほど望ましいとし、「地域」での経験を通じた学習機会の充実を提唱する。なぜなら、地域社会を通して、学校とは異なる経験がえられ、その結果、公共の利益、共通善、責任と義務といった価値を学び、最終的に「社会に参加する」ことが可能になるからである。バーバーはこの種の地域学習を公立学校のカリキュラムとするか、国家による一定の強制力をもつ課外活動とすることが望ましいと主張する(参考文献の(2)より)。 タムやバーバーが想定する地域学習の内容とは、具体的には地域社会のニーズに基づいたボランティア活動である。地域の環境問題に関わったり、社会的に排除されている人々と関わったりするなど子どもたちが社会と接する機会をもつことで、社会を知り、ロールモデルを知り、自らが選択していく生き方の指針となるような経験を積むことができると期待している。そしてそれは、単に、子ども個人にとって有益であるだけではなく、「シチズンシップ」を涵養するという点で社会全体にとってもためになると説く。 このようなコミュニタリアニズムの構想は、1998年に発表されたイギリスのブレア政権のマニフェストでも取り上げられた。 br> |
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参考文献 (1)Henry Tam, Education and Communitarian movement, Pastral Care in Education, 1996, 14(3), pp.28-31 (2)Benjamin Barbar, A mandate for liberty: requiring education based community service, The Responsive Community, 1991, 1(2), pp.46-55 |
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