生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年3月14日
 
 

生活様式枠組と生涯学習研究 (せいかつようしきわくぐみとしょうがいがくしゅうけんきゅう)

framework for the way of life and study on lifelong learning
キーワード : 生活様式、行動様式、生活領域、技術操作法、文化変容
白木賢信(しらきたかのぶ)
3.生活様式枠組による生涯学習の分析と今後の課題
  
 
 
 
  【説明】
 生涯学習は生涯を通じて一定の活動により意識や行動様式を変容する過程であるが、ここで取り上げた枠組は、そのうちの行動様式を捉えたりそれにかかわる分析を行うためのものである。ここでいう行動様式は生活における行動様式であるので、生活様式の観点を用いることが有効であると考えられるからである。
 生活様式枠組による分析としては、例えば、活動の中でどのような生活様式がかかわっているのかを析出したり、どのような生活領域にウエイトが置かれているのかを明らかにするなどの活動分析が考えられる。また、技術に着目すれば、活動における技術の使用分析が考えられるし、技術操作法の使用との関係分析も考えられる。
 なお、この枠組を用いた分析例については、中項目「キャンプと青少年の生活技術習得」を参照されたい。
【課題】
 以上のような枠組で生活様式そのものを捉えたとしても、生涯学習研究では、そのような生活様式の変容を分析する必要も生じるので、さらに生活様式の変容を捉える観点が必要でなる。ふつう、変容とは姿や形が変わること、あるいは変えることで、これは既に存在しているものの変化を言う。しかし、生涯学習の場合は何らかの生活様式が新たに形成されることも多く、そのような場合であっても、その人の生活様式の全体像は変わることになるので、ここでは新たに生活様式が形成されることもことも含め、形成と変化を合わせて変容と呼んでいる。
 そのような変容を捉える観点について、山本恒夫は、先に提出した枠組で文化変容の考え方を導入している。一般に文化変容とは、異なった文化伝統を持つ複数の社会(人間集団)が出会うことで相互に影響し合う際に見られる変化の過程であるが、その考え方で生活様式の変容を捉えると(1)〜(3)の過程を経ると考えられる。
(1) 新たな生活様式が導入されるまでは、それまでに定着していた生活様式が平衡状態を保っている。
(2) そこに新しい生活様式が導入されると、既存の生活様式が解体され、平衡状態が崩れて、一種の緊張状態に陥る。
(3) しかし、やがて、新しい生活様式を取り入れた再統合がなされ、再び新しい平衡状態を作り出す。このようなプロセスを経て、新しい生活様式が定着する。
 また、前小項目で挙げた技術操作法は、異なる技術を繋ぐ操作的な手続きでもあるので、複数の生活様式に適用される操作の仕方になると考えられる。生活様式の変容過程の分析にこの技術操作法を導入していくことも課題の1つであろう。
 
 
 
  参考文献
・吉田禎吾「文化変容の過程」東京都立大学社会人類学研究会『社会人類学』3、pp.1-16、昭和33年
・山本恒夫「社会教育活動分析の枠組」『国立社会教育研修所紀要』第1集、pp.33-50、昭和42年
・宗像正幸『技術の理論』同文舘、平成元年
・石川栄吉・梅棹忠夫・大林太良・蒲生正男・佐々木高明・祖父江孝男編『文化人類学事典』弘文堂、平成6年、pp.674-675(佐藤信行「文化変容」)
・山本恒夫『21世紀生涯学習への招待』協同出版、平成13年、他
 
 
 
 
  



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