生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年1月1日
 
 

大学とICT活用 (だいがくとあいしーてぃーかつよう)

utilization of ICT at university
キーワード : 大学学習情報センター、医療情報センター、神戸防災学習コンテンツ、地域学習情報ネットワーク、バーチャル・ユニバーシティ
今西幸蔵(いまにしこうぞう)
2.大学におけるICT活用による情報提供の課題
 
 
 
 
   大学学習情報センターの役割をふまえて,今後の展開について考えると,次のような課題があがる。
 まずeラーニングを核とした通信教育や遠隔教育の実施,地域社会との情報交流,特にレファレンス機能の活用と具体的かつ直接的な生涯学習支援の必要性である。そのためにはさまざまな学習コンテンツの開発が緊要であり,以下の点に留意しながら学習情報提供システムの構築を図っていくことになる。
1.「いつでも,どこでも,だれでも」という生涯学習の視点から,システム利用者にとっての利便性を高めることが重要であり,自宅でも利用可能なシステムにすること。
2.アーカイブ機能の活用が必要であり,Web上で各種フォーマットが形成できるようなシステムにすること。
3.地域イントラネットやエクストラネットとの接続を視野に入れた検索システムや検索エンジンを開発すること。
4.システム利用者自身が情報発信機能を持ち,システムを通して他者と双方向性のある情報交流を可能とするシステムであること。 
 次にICTを活用した大学が所有する知識財産を,民間企業(産),行政(官),住民(民)というような大学以外の他のセクターが所有する知識財産との相互関係の中で,知識財産全体をどうマネジメント(ナレッジ・マネジメント)していくのかということが重要課題となろう。
 大学の知識財産を地域社会で活用することは,産官学民の各セクターによる知識財産の共有化とセクターを越えた研究の協同化を実現し,セクター間の交流とネットワークの中での知識社会を形成することに結びつき,地域社会における学習情報のネットワーク化が進展する。これを地域学習情報ネットワークと考え,以下のような取組を進めることが必要となる。
1.地域の知識財産(地域知財)の創出につながるような学習機能の拡充
2.雑誌・図書・研究報告書等の情報源の収集
3.基本的なデータベースの構築とネットワーク化の推進
4.地域資料のアーカイブ化
5.ホームページの作成と公開やチャット機能を利用した情報交流等の機能的促進
 このような大学におけるICT活用に立った学習情報提供に関わる課題は,最終的にはインターネット上にeラーニングを中核とした「バーチャル・ユニバーシティ」を構築することを求めているといえよう。ただし,このことは,大学の知識財産が大学以外の他のセクターと共有化することになり,日本の高等教育システムが国際競争の場に参加することになるということを理解する必要がある。
 
 
 
  参考文献
・立田慶裕「大学の教育支援コミュニティの創造に向けて」(『大学教育学会』第28巻第1号,2006年5月)
・今西幸蔵「大学における学習情報提供」(『日本生涯教育学会年報』第27号,日本生涯教育学会,2006年10月)
・今西幸蔵「地域支援としての大学の学習情報センターの可能性」(『阪神・淡路大震災後の地域社会との共生をめざした大学の新しい役割に関する実践的研究報告書第23号』神戸学院大学地域研究センター,2007年3月)
 
 
 
 
 



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