生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年1月1日
 
 

大学とICT活用 (だいがくとあいしーてぃーかつよう)

utilization of ICT at university
キーワード : 大学学習情報センター、医療情報センター、神戸防災学習コンテンツ、地域学習情報ネットワーク、バーチャル・ユニバーシティ
今西幸蔵(いまにしこうぞう)
3.大学の専門分野におけるICT活用
  
 
 
 
  1) 大学医療情報センターでの学習情報提供
 近年の医療現場では,インフォームドコンセントやセカンドオピニオンに対する認識が深まり,患者が自分自身の医療情報を入手することが治療方法の選択や決定の大きな要因となり,それは患者の「知る権利」につながるものであると考えられている。このことは患者の自己選択,自己決定,自己責任といった自己学習能力を活用することが基盤となり,その支援のための「患者図書館」「患者情報室」といった情報提供機関,いうならば「医療情報センター」の必要性が指摘されている。患者は勿論のこと,地域住民を対象とした医療情報提供サービスが求められているのである。医療情報提供サービスの内容をみると,@患者やその家族(地域住民を含む)を対象とした健康・医療関連の図書や資料の提供(貸し出し制度を実施している所もある) Aインターネットに接続してWeb上で各種の医療情報の提供 B過去に疾病した人の闘病記の閲覧 Cボランティア,事務職員,図書館司書,看護師等の医療スタッフによる医療相談 D小規模な勉強会の開催。E患者やその家族の交流とくつろぎの場の提供等があがる。
 大学においては,「医療情報センター」を付属施設として設置しているケースが多く,大阪市立大学医学部医学情報センターのように,医学情報端末室,医学情報訓練室,情報交換室,ホール,医学資料館等を設けてICTを活用した情報提供を行ったり,東京女子医科大学の「からだ情報館」のように,インターネットによる情報提供や相談を担当する常勤スタッフが配置されているところもある。
(2) 大学防災学習情報センターでの学習情報提供 
 阪神・淡路大震災後,地震防災を考慮したライフラインの整備の必要性を指摘する大学もあり,震災関連の情報収集・提供がいくつかの大学で実施されている。このような大学の取組と結びつくものとして,地域住民による防災学習活動がある。例えば神戸市には防災福祉コミュニティという自主防災組織があり,その1つである「神戸防災学習コンテンツ」連携促進協議会は,地域防災の観点として,@災害情報の蓄積と品質管理 A安否情報等初動情報は地域で集約 B住民が危険閾値を把握・災害検証と予測 C多重な情報伝達体制の確保 DICTを活用した地域防災情報の蓄積・掲示 E地域の危機管理対応・災害文化の伝承等をあげている。そこでは,大学の参加による防災デジタルコンテンツづくりと,大学の連携・協力によるデジタル防災学習教材の作成と活用等が重視されている。具体的には,防災資機材・住宅防火自然災害についての調査,防災教育教材作成,防災学習eラーニングの実施等である。
 また神戸市薬剤師会と大学及び地域社会との連携・協力により,ICT等を活用した災害対策システムが構築されている。大学の役割として,薬剤師会の取組と連携・協力して,災害時に必要な薬剤の管理と症状に応じた薬剤の選択,健康相談等の機能を有する医薬情報を提供することが想定されている。こうした一連の動きを「大学防災学習情報センター(構想)」として機能させることにより,従前のように大学だけが管理し,提供してきた知識情報の質と量とは異なったものが提供されることが期待されている。

 
 
 
  参考文献
・和田ちひろ他「患者の自己学習環境の整備と患者向け医療書の選定に関する研究」他(公開シンポジウム記録「これからの医療情報を考える!」,大阪市立大学大学院創造都市研究科,2005年12月)
・桑原文子「患者情報室の現状と課題」(前掲書)
・松崎太亮「神戸発デジタル防災学習のとりくみ」(神戸学院大学地域研究センター生涯教育部会報告書,2006年3月)
・今西幸蔵「大学における学習情報提供」(『日本生涯教育学会年報』第27号,日本生涯教育学会,2006年10月)
 
 
 
 
  



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