登録/更新年月日:2008(平成20)年2月5日 |
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モデル移植の視点から見た広島市青少年メンター制度の特徴としては、メンタリングの本質を米国等の事例から学びつつ、日本の社会状況に合わせた工夫と配慮がなされていることがある。市長の米国での直接経験に基づく発意は選挙公約となり、市教育委員会が直接主催する新規プログラムとして実施された。プログラムの特徴としては、コミュニティ型と学校型の融合が図られていることが挙げられる。交流が自宅を中心に地域コミュニティの種々の場所になっているという点ではコミュニティ型プログラムあるが、学校による広報周知等によって保護者が安心して子どもを託すことのできるプログラムとなっている。 理念や規模等の現状については、米国のプログラムで最も多い「青少年への人格発展への良き影響」に相当する目標が掲げられ、女性メンターが多い点も米国等と共通している。米国での研修の中央値が3時間で19%が8時間以上、16%が1時間以下という多様性を鑑みると、広島市青少年メンター制度が開催している年間3回の半日コースの定期研修会の充実が特筆される。 また、米国での地域コミュニティ型プログラムの経費がメンティ一人当たり約1400ドル(15万円)であるのに対し、広島市青少年メンター制度の年間予算が50組以上で250万円であり、教育委員会内の事業であるがゆえに実行可能な極めて少額の予算規模となっている。20組を一人の専従職員が担当するという米国の実績と比べると、60組以上のプログラムの運営を二人の職員で行っていることは半ば驚異的であり、それを可能にしているが、事務局担当者の類稀な能力と献身に加えて、市教育委員会の直接運営による予算の安定的確保があるように思われる。各国の草の根プログラムの事務局がプログラム存続のための財源確保に少なからぬ労力投入を余儀なくされているのとは対照的である。 広島市青少年メンター制度は、 (1)資格制度による市場独占をすることのないボランティアによる支援・助言であること (2)双方に新たな出会いと生きがい、メンターの役割モデルと善意が子どもの人生によき影響を与えること (3)両者の関係性をモニタリング制度によって専門家が支援すること というメンタリング・プログラムの構造原理を工夫と配慮と共に存分に生かしている。それは、「見知らぬ人の親切」を基点とする青少年向けメンタリング運動の日本での本格的展開に向けた先駆的事例として、平和都市広島が世界のメンタリング運動に誇るべきプログラムとなっている。 br> |
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参考文献 ・渡辺かよ子「円環的生涯発達支援としてのメンタリング・プログラムに関する考察:米国の事例を中心に」教育学研究69-2、2002年 ・渡辺かよ子「日本におけるメンタリング運動:広島市青少年メンター制度の事例を中心に」日本生涯教育学会論集28、2007年 |
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