生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年2月5日
 
 

広島市青少年メンター制度とメンタリング運動 (ひろしましせいしょうねんめんたーせいどとめんたりんぐうんどう)

キーワード : メンタリング、メンタリング・プログラム、メンター制度、青少年、メンタリング運動
渡辺かよ子(わたなべかよこ)
2.広島市青少年メンター制度の概要
 
 
 
 
   広島市青少年メンター制度の募集パンフレットによれば、それは「主に小学生や中学生を対象としており、メンターと呼ばれる人生経験の豊富な大人が、子どもと1対1の関係で、継続的・定期的に交流し、子どもとの信頼関係を築きながら支援し、子どもの精神的・人間的成長を促すことを目的」としている。メンターは、「広島市教育委員会が人物や社会経験などをもとに選考した、子どもに対する深い愛情と理解をもつボランティア」である。
 交流時間等については、1年間、放課後や休日等に週に1・2回、一回2時間程度の交流を行い、曜日時間帯はメンターと子ども、保護者が相談して決定している。交流内容については、決まったものはなく、宿題、料理、地域活動・行事への参加、外出、室内遊び等の事例が紹介されている。交流の場所としては、子どもの自宅を原則とするが、メンターの自宅を含め、地域コミュニティの様々な場所で交流がなされている。交流に要する費用については、あくまでもボランティア活動であり、交流に必要な交通・通信費等の実費弁償として、メンターに1回600円が支払われている。双方が月毎に報告書を提出し、月に1・2回担当者が電話等で状況把握を行いながら両者の関係性を支援するモニタリングを行っている。
 安易な離脱の回避に向け、メンターには信頼関係を損なわないための留意点として、(1)守秘義務、(2)安全への配慮、(3)人権の尊重等、が要請されると共に、社会的責任として、(1)法律等に違反する行為の禁止、(2)社会的信用の確立、が確認されている。メンター登録者は平成15(2003)年度当初5人(女性2)で開始されたが、平成16(2004)年度に42人、平成17(2005)年に81人、平成18(2006)年には101人となっている。登録終了者は計3人で、その理由は転居・体調不良、地域活動多忙による活動辞退であり、登録継続率は97%となっている。
 メンターの年齢構成としては、20代が7人、30代が7人、40代が17人、50代が28人、60代が24人、70代以上が16人となっている。女性が68%を占め、最多年齢層は50〜60歳代である。有職者は男性が48%、女性が41%となり、大学院生や6人の退職校長も含まれている。利用者数については、平成15(2003)年度には5組、平成16(2004)年度には20組、平成17(2005)年度には42組、平成18(2006)年度は60組となり、平成18(2006)年9月時点での交流中のペアは53組となっている。
 利用者数の拡大ならびに参加者の高い継続率の背後にあって、利用者の関係性を支援しているのが事務局である。広島市教育委員会青少年育成部には二人のメンター制度担当者が配置され、専任とはいえ、他業務も兼ねながら、年度当初の新規募集、マッチング、事前研修、交流開始後のモニタリング、年間3回の定期研修会、参加者全員の交流会の開催にあたっている。「あなたの贈るぬくもりが子どもの宝物に」のキャッチコピーとするニューズレター『メンターだより〜ふれあい』が平成17(2005)年3月より毎月発行され、守秘義務に則りながら、メンターや保護者、メンティの声と知恵が共有されている。
 こうした事務局によるプログラム運営上の工夫と参加者の善意により、学習意欲の向上や不登校生徒の登校、親子関係の向上等の成果が報告され、メンターからも「子どもから元気をもらった」、「子どもと共に成長した」との喜びの報告がなされている。
 
 
 
  参考文献
・「メンター制度シンポジウム報告書:あなたの贈るぬくもりが子どもの宝物に!〜広島市の新しい実践から」広島市教育委員会、2004年
・「メンター制度をご存知ですか?「広島市青少年メンター制度」利用希望者募集のごあんない」広島市教育委員会青少年育成部、2006年
・渡辺かよ子「日本におけるメンタリング運動:広島市青少年メンター制度の事例を中心に」日本生涯教育学会論集28、2007年
 
 
 
 
 



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.