登録/更新年月日:2006(平成18)年11月2日 |
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【OECDによる財政支援システム構想】 1996年にOECDは『万人のための生涯学習』の中で、財政支援のための理論モデルとして次の6点を示している。(なお翻訳文においては白井裕氏の説明を取り上げている。) 1)引き出し権モデル(drawing rights model) 収入移動保障システムという考え方に立って、個人的な仕事、教育やレジャー等について調整、配分、融資するもので、個人の求める学習に計画的にファンドを提供するという考え方。 2)バウチャーモデル(voucher model) 教育エンタイトルメント(利益または権利を受ける資格)として、教育と訓練の供給者にファンドを提供する代わりに、政府が個々の資格またはバウチャーを割り当てるという考え方。 3)競売モデル(auction plans) 例えば大学等の教育と訓練を提供している機関が、学生を獲得するために政府に付け値を申し出るという考え方。 4)雇用者経費負担モデル(single-employer financing) 雇用者が経費負担するというモデル。利面と不利な面の両方があるとされ、労働者の参加に必要とされるファンドが雇用者の意欲で決定するという考え方。 5)自己負担モデル(self-financing) 学習者自身が自己資金により、教育や訓練に要するファンドを支払うことを要求されるというモデル。多くのOECD参加国は「ローン・補助金モデル」を運営し、そのために特定目標グループの参加は、公的なファンドをとおして促進されることが示されている。 6)準財政的資金モデル(parafiscal funds)等である。 私的ならびに公的な雇用者経費を支払うことを要求するというものである。但し、このアプローチには不利な立場にある集団や失業者等の学習が奨励されないという欠点があると指摘されている。 【新しい財政支援システムの課題】 生涯学習社会における市民活動が必要とするファンド全体をシステム化することが必要である。各方面からの財政的支援はもちろんのこと、市民活動の場の獲得、情報収集及び情報提供等の市民参加のシステムづくりが求められている。そうした活動に対する自己評価や第三者評価制度の導入及びその具体化等が模索され、生涯学習推進計画との融合や連携といった視点からの財政的支援も望まれている。新しい財政支援システムの構築における課題を整理すると、次の8点があがる。 1)新しい財政支援システムを構築するには行政の支援が不可欠であること。 2)従来型の行政依存的な補助金制度から官民協働型の補助金制度に改変する必要があること。 3)官民協働型の補助金制度に生涯学習の考え方を導入していく必要があること。 4)生涯学習評価をとおして制度の公平性や公開性を高め、説明責任を明らかにしていくこと。 5)行政からの拠出金以外に、寄付行為や融資等による資金の運用を図る必要があること。 6)税の還元や交付金等の多種多様な行政・企業からの支援策が求められること。 7)経費節減を図るだけでなく、民という自立した活動の主体を形成すること。 8)産官学民が一体となったネットワークを構築し、ファンドのシステム化を具体的に図ること。 br> |
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参考文献 ・OECD,Lifelong Learning for All,OECD Publications,1996,pp243-245 ・原著の翻訳:白石裕『分権・生涯学習時代の教育行政』京都大学学術出版会,2000. |
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