生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2014(平成26)年11月10日
 
 

高齢者大学における協調学習の有用性 (こうれいしゃだいがくにおけるきょうちょうがくしゅうのゆうようせい)

usefulness of collaborative learning in the senior citizens college
キーワード : 高齢者大学、グループ学習、協調学習、社会貢献活動、プロダクティヴ・エイジング
藤原博史(ふじわらひろし)
2.協調学習の有用性の検証
 
 
 
 
  【分析結果】
 神戸市シルバーカレッジの学生に対して行った「生涯学習の学習方法に関するアンケート調査」の数値データを量的分析した結果、次のことが明らかになった。
(1)70歳以上の学生と69歳以下の学生について学びの達成感を比較すると、グループ学習を始める前の不安感は70歳以上の学生の方が高いが、グループ学習を終えた後の達成感はいずれの年齢層も高く、差はなかった。
(2)講義形式の授業とフィールドワークを伴うグループ学習について学びの達成感を比較すると、グループ学習の方が講義形式の授業に比べて学びの達成感が高かった。
(3)学生とグループ学習との出会いは、学びの新鮮さ、学友と学ぶ楽しさ、学びの達成感を生み出し、学生の活動的な生活に影響を与えていた。
 次に、グループ学習を観察した記録とアンケート調査票の記述欄に書かれた言語データを質的分析した結果、次のことが明らかになった。
(4)人生経験豊富な学生が多様な考えや知恵を出し、互いに助け励まし合い、その結果、到底一人では達成できないような学習成果を挙げていた。これこそが高齢者のWisdom(英知)であり、グループ学習の相乗効果である。
(5)学生は、自己決定型のグループ学習は経験がなく不安であったが、学習を終えた後の心境は、「とても不思議でとても素晴らしく、楽しい学習の場だった」と記述している。それは、従来の学習方法に対する価値観の問い直し、意識変容の学習が行われた証である。
(6)「他人の意見を聞かない年代だけに協力する精神が大切」という記述にみられるように、自己主張はするが妥協点も見つける。そのバランス感覚がおとなの円熟した知恵である。
(7)学生は、サードエイジの生き方をグループ学習の中に見つけていた。それは社会参加をライフワークとする生き方であり、プロダクティヴ・エイジングの実践である。
(8)同じ目標に向かって一緒に学習した仲間の絆は、グループ学習をやり遂げたという達成感と満足感で強く結ばれていた。
【考察】
 これらの分析結果から、高齢者である学生は、当初、授業は講師から教わるものという伝統的な価値観を有していたが、グループ学習との出会いが学習方法に対する意識を変容させ、高齢者のWisdom(英知)を生み出していた。したがって、高齢者大学における協調学習は、高齢者の学習意欲を高め、高齢者の活動力を生み出す「おとなの学び」に有用な学習方法であるといえる。
 
 
 
  参考文献
・藤原博史「高齢者大学におけるフィールドワークを取り入れた協調学習の有用性」佛教大学大学院紀要教育学研究科篇、第42号、2014年 
・藤原博史「高齢者大学を卒業したシニアのプロダクティヴ・エイジングに関する研究」佛教大学教育学部学会紀要、第13号、2014年 
 
 
 
 
 



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