生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2014(平成26)年11月10日
 
 

高齢者大学における協調学習の有用性 (こうれいしゃだいがくにおけるきょうちょうがくしゅうのゆうようせい)

usefulness of collaborative learning in the senior citizens college
キーワード : 高齢者大学、グループ学習、協調学習、社会貢献活動、プロダクティヴ・エイジング
藤原博史(ふじわらひろし)
3.プロダクティヴ・エイジングと協調学習
  
 
 
 
  【定義】
 プロダクティヴ・エイジング (Productive Aging) は、直訳すれば「生産的に老いる」という意味になるが、適切な日本語はない。その概念は、老いを積極的に捉え、高齢期にあって社会参加を継続しながら生活することである。また、地域住民が行うボランタリーな活動を意味する用語として「社会貢献活動」を用いる。
【説明】
 前述の「生涯学習の学習方法に関するアンケート調査」の結果から、グループ学習がきっかけでボランタリーな活動を始めた学生が少なからずいた。このことは、高齢者大学における協調学習が高齢者の社会貢献活動の創出要因として有用であることを示唆する。ついては、神戸市シルバーカレッジの学生が、在学中または卒業後、社会貢献活動を始めるにあたり影響を受けた要因を明らかにし、社会貢献活動に対する協調学習の有用性を検証するとともに、高齢者大学におけるプロダクティヴ・エイジングの可能性を探ってみた。
【事例】
 平成25(2013)年、神戸市シルバーカレッジの卒業生に対して「卒業後の社会参加活動に関するアンケート調査」を実施した。調査対象者は、カレッジを一年前に卒業した者である。では、その結果をみてみよう。
(1)回答者の64%が社会貢献活動を行っており、活動を始めた時期は、入学前が23%、在学中が45%、卒業後が32%であった。つまり、社会貢献活動を行っていると答えた卒業生の77%が在学中または卒業後に活動を始めていた。
(2)回答者が社会貢献活動を始めるにあたり影響を受けた要因の第1位はクラブ活動(29%)、第2位は地域交流活動(27%)であり、グループ学習(11%)は第3位であった。このクラブ活動とは、コーラス、ハワイアンバンド、マジックなどのクラブが福祉施設等を訪問し、パフォーマンスをとおして交流する活動である。また、地域交流活動とは、神戸市シルバーカレッジの学習体系に組み込まれた自主的な活動であり、その内容は、児童の学習支援・登下校見守り、里山保全、公園の美化など、人的サービスを提供するボランタリーな活動である。
 この結果から、グループ学習は社会貢献活動の創出要因の一つではあるが、クラブ活動や地域交流活動に比べるとその役割は小さい。つまり、高齢者大学におけるプロダクティヴ・エイジングは、協調学習よりもクラブ活動や在学中のボランタリーな活動にその可能性を見いだすことができる。
【課題】
 今日の高齢者大学は、協調学習をとおして自己決定型学習および変容的学習を進める「おとなの学び」の場だけでなく、社会貢献活動を体験的に学ぶ場でもある。それは、高齢者大学が高齢者のプロダクティヴ・エイジングの可能性を高めるという新しい役割を担うことであり、高齢者大学に寄せられる期待は大きい。
 
 
 
  参考文献
・藤原博史「高齢者大学におけるフィールドワークを取り入れた協調学習の有用性」佛教大学大学院紀要教育学研究科篇、第42号、2014年 
・藤原博史「高齢者大学を卒業したシニアのプロダクティヴ・エイジングに関する研究」佛教大学教育学部学会紀要、第13号、2014年
 
 
 
 
  



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