生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年4月24日
 
 

助産師の生涯学習 (じょさんしのしょうがいがくしゅう)

continuing education of midwives
キーワード : 助産師、生涯にわたる専門的な学習、動機づける要因
松村恵子(まつむらけいこ)
1.助産師の生涯にわたる専門的な学習を動機づける要因
  
 
 
 
   生涯学習の基本は個人が自発的意思に基づいて行う学習であり、その内容も趣味的なものから職業的能力の向上をめざすものまで多様である。中央教育審議会答申『新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について〜知の循環型社会の構築を目指して〜』(平成20(2008)年2月19日)は、生涯学習推進の留意点に「個人の要望」と「社会の要請」のバランス、「継承」と「創造」等を通じた持続可能な社会の発展、連携・ネットワークを構築の三点を掲げている。
 本論の対象となる助産師では、職業的能力の向上をめざす観点から「生涯学習」というよりも「キャリア発達」という捉え方が多いが、ここでは発達の素因、すなわち,助産師が生涯にわたって自発的意思に基づいて専門的な学習を継続する個人の内面的な要因に注目する。具体的には助産師志望の動機、達成目標傾向、能力・努力観、学習方法、自己教育力、助産師業務の自己評価について、今回は、A県の助産師116名の実態分析の概要を述べる。
(1)助産師志望動機で影響を受けた人は助産師52名、看護教員20名、誰もいない11名、母親10名、産婦4名で、理由について記載があった107名の内容分析では、《母性看護学での学び=31個》は<講義・実習の影響=15個>・<助産師の専門職者モデル=13個>・<看護教員の看護モデル=3個>で、《助産師という専門職への憧れ=28個》は<助産師への憧れ=18個>・<助産に関心=10個>で、《生命誕生=21個》は<生命誕生に感動=14個>・<生命誕生にかかわりたい=7個>で、《その他=27個》は<職場のすすめ=8個>・<就職試験に落ちたので等=7個>・<母,先輩,医師の影響=6個>・<助産師の資格取得希望=6個>であった。
(2)達成目標傾向が高い(5点評定)のは「自分の能力を高めたい(4.5)」、「いまの学習が次の段階の学習に役立つ(4.4)」、「解ることが楽しい(4.4)」、「新しいことを知りたい(4.4)」で、低いのは「同僚の注目を受けたい(2.8)」であった。
(3)能力・努力観で高いのは「努力して磨かなければ意味がない(4.3)」、「努力から得るものは大きい(4.1)」、「努力できるのも能力の一種である(4.1)」で、低いのは「能力のある人ほど努力は必要ない(1.9)」であった。
(4)学習方法で高いのは「解らないことは自分で調べようとする(3.8)」、「資格を得るなど目標があると学習する(3.8)」で、低いのは「業績に反映しなければやる気ない(2.5)」、「競争して学習することが好き(2.7)」であった。
(5)自己教育力で高いのは「自分の目標に向かって努力したい(4.1)」、「最後までやり遂げたい(4.1)」、「疲れているときは何もしたくない(4.0)」で、低いのは「自分のことが恥ずかしい(2.4)」、「何をやっても駄目である(2.4)」であった。
(6)助産師業務の自己評価で高いのは「妊婦の助産診断と保険行動の説明など(3.9)」、「授乳,沐浴,育児の説明など(3.8)」、「産褥体操の目的と方法の説明と対話(3.8)」、「家族計画の説明と対話(3.8)」、「褥婦の助産診断とケアなど(3.7)」等で、低いのは「遺伝相談の機会があれば対応(1.8)」、「不妊治療者の援助の機会があれば対応(2.1)」、「性教育の企画,運営,評価(2.3)」、「学術集会での研究発表(2.3)」等であった。
 以上のことから、自己成長・発展の志向性が高く、目標達成に向けて努力を重ねる姿勢を優位に持っているといえる。
 
 
 
  参考文献
1)中央教育審議会『新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について〜知の循環型社会の構築を目指して〜』(答申),平成20年2月19日.
2)松村惠子「いのち育む香川の助産師〜助産師の生涯学習への動機づけ過程からの分析〜」香川母性衛生学会誌(5),2005年,p1-9.
 
 
 
 
  



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