生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年9月9日
 
 

再チャレンジ施策と生涯学習推進 (さいちゃれんじしさくとしょうがいがくしゅうすいしん)

キーワード : 再チャレンジ、キャリア形成、生涯大学システム、実践型学習支援システム
伊藤康志(いとうやすし)
1.再チャレンジ支援策
  
 
 
 
  【字義】
 「国民ひとりひとりがその能力や持ち味を十分に発揮し、努力が報われる公正な社会」、「多様な機会が与えられ、仮に失敗しても何度でも再チャレンジができ」る「働き方、学び方、暮らし方が多様で複線化した社会」の構築を目指し、政府全体で進められた政策・施策群のこと。安倍元首相の肝いりの政策として政府全体として取り組まれた経過があり、首相交代によって事実上消滅した感が強いが、基本的な問題意識は今日でも有効であり、各省庁の関連施策の中に溶け込んでいる。
【説明】
1)2006(平成18)年に公表された「再チャレンジ可能な仕組みの構築」(「多様な機会のある社会」推進会議中間とりまとめ)では「再チャレンジを可能とする柔軟で多様な社会の仕組みの構築」(人生の複線化)を目指し、
a.働き方の複線化
b.「学びの複線化」(いつでも学び直しを可能に)
c.暮らしの複線化
に整理し関連する各施策をまとめている。
2)フリーター、ニート、子育て中の女性、障害者、高齢者といった様々な事情・状況にある人々への支援であるため、支援策自体も多様で混在している(新規に立案化・予算化されたものもあれば既存施策の登録もある)。
 教育分野は、
ア.再チャレンジのための地域のワンストップサービスの構築を目指す「再チャレンジのための学習支援システム」構築事業
イ.大学・専修学校での社会人の学び直しを支援する「大学・専修学校等における再チャレンジ支援推進プラン
ウ.学校教育段階におけるキャリア教育の推進(再チャレンジにはファーストチャレンジを含む)
等で構成された。
3)アについては、大学・専修学校、企業、NPO、行政部局等の連携によって、「就業・起業やボランティア活動等社会参加等の新たなチャレンジをしようとする人に対し」「キャリア形成支援を含めた学習相談を行うとともに、必要な知識・技術が修得できる学習機会を」提供し「学習相談から社会参加までを一貫して支援する学習支援システム(ワンストップ・サービス)」の構築を目指した委託事業である。
4)イについては、学校教育法改正に伴う「履修証明制度」、職業能力の証明、就職機会へのアクセス保障を目指す「ジョブ・カード制度」とも連携し、大学・専修学校等における教育研究のノウハウを活用して編成され、職業能力の形成に資する「実践型教育プログラム」の開発も意図され、社会経済的な枠組みの中でも大きな役割が期待されている。
5)ウについては、兵庫県の「トライやる・ウィーク」をモデルにした、中学校における5日間以上の職場体験を奨励する「キャリア教育実践プロジェクト」、主に普通科高校におけるキャリア教育の在り方に関する調査研究等のことであった。
6)生涯学習支援として重要なのはアである。2008(平成20)年2月に公表された中央教育審議会答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」では、「目指すべき施策の方向性」に「多様な学習機会の提供及び再チャレンジが可能な環境の整備」を挙げた。
7)安倍政権以降、福田政権、麻生政権と約1年と短期間で首相交代が行われる中、経済不況など社会の変化もあったにせよ、官邸主導による政策継続の難しさを示すこととなった。
 
 
 
  参考文献
・内閣府再チャレンジ担当室「再チャレンジ支援総合プラン資料集」2007(平成19)年
・文部科学省生涯学習政策課政策課「再チャレンジ支援に関する取組について」『教育委員会月報』2007(平成19)年8月号、第一法規
 
 
 
 
  



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